「吾輩は疲れたである」
「どんだけ尊大な猫だよ……」

 有難いね。ちゃんと元ネタ分かってくれたのね。
 
 ちまちまと雑用を任されて疲労困憊。
 私の上腕二頭筋が悲鳴をあげてる。
 
 でも頑張るよ。舞台の上で稔が役者が実力を出し切って輝けるのは、裏で一生懸命サポートしてる私達のお蔭だと思えばね。
 だから稔お願いだから、一人で良いからイケメンホイホイしてくれ。
 じゃないと私が報われない。
 
「オレ等確実に力仕事向きじゃないのに、こき使い過ぎじゃね先生ってば」
「まぁ体育委員も全員出払ってるみたいだし他に言える奴いなかったんだろ」

 なんて大人なの筧くん!
 ちょっぴり担任バカにしてるよね!
 
 まだ若いから先生たちの中では立場低いから頼まれたら断れないだろうし。
 かと言って一人で何とかなる作業量じゃないし。
 そして私達にお鉢が回ってくる。
 
 全ては担任が弱いせい(笑)
 みたいな言い方だった筧くんが実はウチのクラスで一番の実力者な気がしてきた。
 
 今までもそうだったけど。これから一切筧くんには逆らわない。絶対にだ!
 
「あーあ……リレーどころか部活対抗も終わっちゃってるし」

 運動部から文化部までどんな人達がいるのか観察しようと思ったのにぃ。
 グランドを見やるとちょうど次の競技の準備をしているところだった。
 
「次って何だっけ?」
「さぁ?」
「え? さぁってどういう事? 筧くんは何のために眼鏡を掛けているの? 未来を先読みするためだろう!?」
「全国チェーンの眼鏡屋のにそんな人類の英知を遥かに超えた機能付いてねぇよ!! 試してみろ!」

 むしろあるなら欲しいわ!! とちょっぴり欲望を垣間見せる筧くんは、自分の顔から顔の一部と言っても過言ではないはずの眼鏡を外して私の顔に装着させた。
 
 私も欲しいなぁ。
 そしたら誰と誰がくっつくとか即分かりなのに。
 
 あーでも分りたくない気もしなくも、ない?
 
 かけられた眼鏡の位置を直す。
 お? 思ったより度が低いのか目痛くない。
 
 パアン、と火薬が弾ける音がして次の競技の開始を告げるけど、今の私はそれどころじゃない。
 思いついたネタをやらないと気が済まない。
 
「ははは、まるで人がゴミのようだ!」
「はいはい、ムスカムスカ」
「筧んちょ酷い!! もっと乗ってくれても良いじゃん、ペーターの真似してくれても良いじゃないかぁ」
「それハイジに出てくる少年!」

 そうだっけ? あらら素で間違えちゃったわ。テヘペロ
 
 うわすっごい軽蔑した目で睨まれた。
 容赦なさ過ぎてむしろ癖になるというか快感? みたいなものがね。
 
 しかし私はMではないと断言するよ!
 
 掛け慣れてない眼鏡は変な感じするけど、新鮮と言うか何だか違う自分になったようで楽しいね。
 
 眼鏡というのはBL王道には欠かせないキーアイテムであり、また見た目は子どもで頭脳は大人な探偵の七つ道具たりえる、人類の財産とも言える一品だよね。
 



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