二世の契り | ナノ


24の蝋燭



何とはなしに大人になってしまっていた。
毎年毎年誕生日を祝われる度に出てくるケーキに一本、また一本と蝋燭が増えていく。
仲間内で任務の無い連中が数人集まってバースデーソングを適度な合いの手を入れながら歌うのだ。

ハッピバースデー沙羅

私はそれを、どこか他人事のように見つめていた。

「あんた、今年でいくつよ?」

にやにやとした笑みを浮かべて脇を小突いてきたアンコに顎でケーキを指す。
そこにはご丁寧に24本もの蝋燭が、揺らぐ生クリームとふわふわのスポンジの上で妙なバランスを保って刺さっていた。
私のようだ、と思った。
熱で溶けていく生クリームと、ふわふわと体良く呼ばれるがその実スカスカのスポンジ。
その上に立つ蝋燭こと私。
いつ倒れてもおかしくないのに、一度も倒れるところを見たことがなかった。
そんな蝋燭の足掻きにも意地にも似た姿に、呆れと笑みが同時に口から息となって溢れる。
私はケーキの上に乗る蝋燭のようだ。
そんなことを、誕生日が来る度に頭の隅では考えていた。
勿論、誰にも告げたことはない。

誕生日も、ケーキも、私は好きになれなかった。





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