二世の契り | ナノ


monologue:6



部下の誕生会に出てくると言った親父が、何故かその部下に送られ帰って来た。

母ちゃんがへべれけの親父の肩を持つ。
退院したばかりだというのに、「どれだけ飲んできたのよ」と親父に対するツッコミの鋭さは健在だった。
俺は曲がりなりにも息子として申し訳なくなり、送ってくれてありがとうございました。と頭を下げる。

送り届けてくれたのはゲンマさんと、あの人だった。

部下の誕生会というのは、どうやらあの人の誕生会だったらしい。
俺はそれならそうと名前を出せばいいのに。と思ったが、そこに今までの親父とあの人の微妙な関係性を感じ取り閉口した。
母ちゃんが連れてきてくれた二人にお礼でもとあたふたして、それをゲンマさんが気にしないでくださいと止める中で、俺はあの人から目が離せなかった。
母ちゃんたちと話す、あの人の顔。
疲れているのか薄っすらと浮かぶ目の下のクマと、針金が入っているみたいに表情の変わらない笑顔。

“作りもの”だってのは直ぐに分かった。

それは、俺があの人と親父の間にある何か他人の入り込めない空気の一端を垣間見たことがあるから気付けたものかもしれない。

そして帰り際、親父を掠めた視線に驚いた。

小さく息を詰める音と、薄く噛んだ唇に伏せられていく睫毛。

その顔は、まるで……

ごくりと息を飲んだ俺の思考は、居間へと向かった母ちゃんの手伝えコールに、ぷつりと切られてしまった。





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