After☆Story 3/9
〜三年前〜
「雅樹もここ受験するなんて聞いてないんだけど!」
「何でわざわざ言う必要があんだよ。つか知名度と場所的にここが妥当だろ」
「う…そ、そうだけどさ…冷たいじゃない…」
「な…っ!んな顔すんなよ…俺が悪いみてぇじゃん…」
「雅樹が悪いもん…」
「あぁもううっせぇな!悪かったよ!入学式なんだから笑え!ほら!そんなぶっさいくな顔してたら誰も寄ってこねぇぞ!」
「ぶ…!な、なんですってぇ?!雅樹のばか!友達いっぱい作ってやるもん!べーだ!」
「お〜お〜精々頑張れ。遊んでばっかで保育士になれなかったら笑ってやっから」
「なるもん!絶対なるもん!雅樹だけには負けない!」
「言ったな?!俺だって負けねぇから覚悟しとけよ!」
〜〜〜〜
「なぁ見たか?保育科にすっげー可愛い子がいるらしいぜ?!」
「知ってる!藤島桜柚だろ?!あの子が先生になってくれるとか俺子供に戻りてぇよ!」
「おっまえその発想はないわ!普通に付き合うとかあんだろ!」
(…あ〜そうだった。あいつ黙ってりゃ結構モテんだった…)
「…話に割り込んで悪いけどあいつフリーじゃねぇよ?」
「えぇっ!そうなのか?!…いやまぁ男いない方がおかしな話か…」
「くっそ〜羨ましい!一体どこのどいつだ〜!」
「悪い。それ俺。そんじゃ」
「「え…えぇぇぇぇぇぇえええ〜!!!」」
(こちとら12年片想いしてんだ…おちおち持ってかれてたまるかっつーの…)
今思えばあれが一目惚れと言うのだろう。
ピカピカの小学一年生だというのにどこか暗い表情のその子に何故か目が行った。
緊張しているのだろうか…声をかけてみようか…そう考えている自分も緊張しているのだと気付いたのはその子に近付こうとしていた時だった。
「さぁちゃん!お迎えに来たよ〜!」
「桜柚ー!帰ろ〜!」
そんな二つの声が聞こえた瞬間、先程まで俯いていたその子の表情が一瞬にして笑顔に変わった。
それに驚いて振り返って見た瓜二つのその顔に、勝手に口が動いた。
「すっげー!おまえらおんなじ顔してんだな!」
その後の会話は正直覚えていない。
ただ怒らせたことだけは覚えてる。
自分の口が悪いことも知っていたし、思ったことをそのまま言葉にしてしまうのが癖だとも自覚していた。
同時に嫌われることも覚悟した。
けれど…
「な、何よそれ!別にあんたなんかに仲良くして欲しくなんか…っ!」
大人しいという印象だった彼女の見方が変わった。
面白いと思ってしまった。
これは一目惚れで合っているのだろうか…。
だけど正解なんてどうでもいい。
これが俺の一目惚れで…初恋なんだ…。