定めの炎 2
彼女の声を聞き、安心したのかコトハは息を吐く。
「シャンクス殿……少しお時間いいでござるか?」 『はい。いいですよ』 「ユア殿の事でござるが――」 『マスターの事……何か問題でも起こしましたか?』 「い、いや。そういう事ではなく……ユア殿を探しているでござるが、外に行ったらしく……どこに向かわれたか、分かるでござるか?」 『外に――』
悩む気配を一瞬見せたが、シャンクスはすぐに頷く。
『分かりますよ』 「本当でござるか!」 『ナンパにでも行ったのでしょう。場所も何となく察しますが、何か重要な要件でも……?』 「テナン殿が、呼んでいたので……」 『そうですか。すぐに帰ってきますよ。失敗するでしょうし』 「そ、そうでござるか……」
きっぱりと断言する従者の言葉に、コトハはユアに対し、可哀想だな、と思った。しかし、言わず胸の内に仕舞う。いつもの事なのだ、と。 ふと頭の中に疑問が浮かんだので、話題を変えた。
「そ、そういえば、シャンクス殿……」 『何でしょう?』 「シャンクス殿は今、どこにいるのでござるか? 探してもなかなか見つからなかったので…」 『私は今、地下にいますよ。少々やる事があったので』 「地下……もしかして、資料室?」 『はい。その声は、レヴェリーさんですね』 「そうです……あれ、でも、地下って……」
二人はお互いを見る。資料室も調べたが、見落としたのだろう。
『私は奥にいましたし、本の山のせいで見つからなかったのでしょう』 「そうでござったか……」 「ごめん、コトハ。私が、ちゃんと見てなかったから……」 「いや。資料室は拙者も見たでござるから、レヴェリー殿だけが悪くはない」
反省している二人を見つめ、リゼルは資料室の片づけをしないとな、と心に誓った。 シャンクスは静かにしていた。 コトハは、何かを思い出したのか、ハッとし呟く。
「シャンクス殿が、地下に居るとなると……」 『どうかしましたか?』 「アックス殿がシャンクス殿探しを手伝うと言って、外に行ってしまったでござるよ…」 『通信機に連絡――』 「実は、アックス殿。通信機を持っていなくて……」 「何で、止めなかったんですか……」 「止める前に、行ってしまって……」
肩を落とす姿に、何も言えなくなる。
『いつ、話をしたのですか?』 「……午後……いや、ほんの少し前に話をしたでござる」 「今は、夕方、ですね……」 「アックスを探そう!」
リゼルの大声に近くにいた二人は耳を塞ぐ仕草をする。彼は謝る。
「そうでござるな。拙者にも責任がある。探しに行こう」 「私も、行きます!」 『私も行きましょう。やる事も終わりましたし。それに、私を探してくれてますから』 「お願いするでござる」 『では、アックスさんを見つけ次第、連絡するとしましょう』 「拙者は、通信機を取りに行くでござる――レヴェリー殿は?」 「私はテナンさんに、ユアの事を伝えに行った後で……」
コトハは通信機をリゼルに返す。
「というわけでござる」 「分かった。先に行ってるね」
三人は途中で別れ、それぞれ行く所へ走って行った。
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