邪となる影 6





中に行ったレオは、思いっきり顔を顰めていた。周りは全部黒く、自分がどこを歩いているか分からなくなる。適当に歩いていると、大剣を持っていない腕に何かが巻きつき、引っ張ていた。慌てる素振りを見せないレオは、視線をそこに持っていく。
ミウナが先程放ったケーブルで、どうやらこっちは違う、と伝えているようだ。試しに、一歩踏み出してみると、ケーブルは少し強めに腕を引っ張る。

「へいへい、違うのね。で、どこにあるんだ?」

彼の問いに答えるように、腕に巻きついているのとは違うケーブルが道を示す。そちらに足を進める。

「ありがとさん」

次々現れ、道を教えるケーブルにお礼を言いながら、歩く。今、ケーブルは分かりやすくなっている。彼女の命令なのだろうか。心の中で彼女にお礼を呟く。
このケーブル達はミウナに従順で、彼女が大切に思っている者の命令も聞く、らしい。本人が言っていたのだから、そうなのだろう。
その中でも、レオとカザンには特に素直に命令を聞く。とはいっても、あまり彼女のケーブルを使う人はそういないので、分からない。
カザンは分かるのだ。しかし、自分に何故、こんなに素直に聞くのか、不思議に思ってしまう。
彼女とよく行動を共にしているからなのか――
問い掛けても、ケーブル達が分かるはずないのだから、聞けない。聞かない。

「本当、どうしてだろうな―?」

でも、何となく言ってみる。やはり、答えは返ってこない。ただ、腕に絡みついているケーブルが少し力を込めたくらいで、終わる。
だよな、と苦笑し、闇の中を進む。
後、どれくらい進めば辿り着くのだろうか。かなり歩いているような錯覚が起こる。目印がないからそう思ってしまうのか。
静かに、何も考えずに前を見て進む。
すると、先が少し明るくなる。ケーブルはその先に伸びている。足を踏み入れると、そこには大きな一つの機械があった。想像していたのより、大きくて驚く。

「うわっ、意外にデカイ。すごいな、これ」

そして、感嘆する。
ふ、と気がつくと彼の周囲をケーブルが張り巡らされていた。どうやら、守っているようだ。確かに、ケガレを吸い込んだりすると、体に悪影響が出る。
しかし、レオはあまり気にしていない。いや、気にするという事すらしていない。

「お―、ありがたいけど。俺に必要はないぞ―」

呑気な声音だが、ケーブル達はそのままでいる。言っても無駄なようだ。
ここまでしてもらうと、逆に意思を尊重したくなる。

「じゃあ、よろしくね―」

ケーブルの先端が微かに揺れた、ような気がした。満足したのか、レオは大剣を肩から降ろす。
そして、ニヤリと笑った。そう、嗤った。

「それでは、やりますか。さて、出番だぜ? 大暴れしますか」

ブン、と大きく音をたて振ると、構える。
乾いた声が、響く。

「来い。‘八卦’!」

刹那。
彼の手にあった大剣が光帯びる。そして、彼の右腕――大剣を持っている腕に絡みつく蛇。
もう一度、大剣を振ると、歩き出す。彼が進むと、その穴を埋めるようにして、ケーブルが背後に増える。
きっかり十二歩。目の前にいるケガレを放つ機械に、彼は大剣を振り降ろした。
固いはずの機械に滑り込むように入る剣の刃。地面を蹴り、何回も切っていく。

「これで、最後っ!」

声と一緒に降ろした剣を着地すると同時に、消す。彼の背後で機械が粉々になって倒れていく。
いつの間にか右手にいた蛇がいなくなっていた。黒い霧が晴れていく。ケーブルの姿もなかった。

「終わった終わった―」

靴にコツンとあたり、下にを見ると黒い丸い物体があった。転がってきたようだ。
拾い上げると、持ったまま視界が晴れていく中、レオは一人伸びをしていた。












mokuji



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