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 ロスマリナス 08

次にその庭を訪れたのは王都にも地下街にも特に用事もない時だった

強いて言えば次の壁外調査を控えていたくらいだ


深い意味はない

一方的にだが二度も物をもらったので礼の一つでも言おうと思っただけだ
…あのハーブティーが気に入ったなどと到底言えるはずもないが



カツ、と馬の蹄が道を舗装する煉瓦の上で小さく音を鳴らす

あの女は新しく束にしたらしい草を逆さまにして干しているところだった

俺に気付き、ダークブロンドの髪が振り向きざまに揺れる


そのままいくつかまた乾燥した葉を多めに手に取って
柵の方にゆっくりと歩いてくる
俯き気味でまだ目を合わせようとしない


悪くなかったみたいですね

よかったらこちらもどうぞ、と差し出されるそれは前回のものとは少し違った種類だということは分かった


見知らぬ奴からこんなに物をもらうことが今まであっただろうか

こいつにとってこれが普通なのか



…いや、と答える

前回ので足りている、もらう理由もない
だが礼を言う

そう伝えると
それを気にする素振りもなく
そうですか、と言って手に持っていた植物を足元の籠にいれた


その仕草を見ながら
ふと思い出したことがあった


なあ、とその姿を見下ろして声を掛ける

…あんたが出す条件とは、どんなものなんだ?


単純な好奇心だった

思い出したのはこの女が求婚者の男共に出すという条件のことだ


彼女は意外そうにこちらを仰ぎ見てから
そうですね、あなたの場合なら、と一瞬間を置いてから

巨人の血を持ち帰ってくるなんてどうでしょうか、と呟いた


冗談にも取れるその内容にも女は笑いもしない


なるほどな、と思う
こうしてその相手に合った無理難題を吹っかけるのだ


だがこの薄いヘイゼルの様な緑がかったような瞳に面と向かって言われると、不思議と簡単に無理だと言う気になれなかった


その結果は誰の目にも見えている

この返事も冗談にも聞こえるかも知れないと思いながら
…やってみよう、と取り敢えず返した



  


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