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 ロスマリナス 02

その日滅多にない休みに街へ出たのは単なる気まぐれだったと思う


酒場に向かう道中雑踏で似たようなダークブロンドの髪色を見たとき、やっとその存在を思い出したくらいだ

酒場のカウンターに腰かけるといくつかの好奇な目がひそひそと話しながら自分の顔を見て振り返るが特に気にもならない

地下街での自分を知る人間もまだ都には少なからずいるんだろう


そうしてまだ明るい時間から特にすることもなく酒を煽る中で、ぼんやりと町民の下世話な噂話を聞き流していた

喧噪の中
詮索好きな声が意識せず耳に入ってくる

声の主は顔を赤くした後ろの席の年配の男三人組だ

何が楽しいのか
近隣の住民の個人情報をべらべらとよく喋る


その話が街はずれに住むという
妙齢の女のことに触れ始めた

住んでる場所や年齢、
そうそう見ない美形の不愛想な女、という点で思いつくのはあの女のことだった

その見た目もあって求婚者が後を絶たないんだそうだ

さぞかし男の気を引くのが上手いんだろうと
その顔を思い出して思う




以前は結婚の約束までしていた男がいたそうだが

壁外に出てそのまま帰ってこなかったとか



それからは地主だったり貴族だったりがそいつを見初めては噂になるようだった


少しばかり見た目が良いといらねぇはずの苦労があるんだろ
そりゃあご苦労なこった


耳障りなくらいに盛り上がる男達の声に眉を顰めながらグラスを傾けた



女はそのまま断るわけではなく、条件を出してそれをこなすことが出来れば申し出を受け入れるというものだった




身寄りがないという彼女が狭い壁内でやっていくための知恵か
開口一番断らないことでそうした方が角が立たないのか



都には人が溢れて色んなやつがいるからな、と特に何も思わなかった



  


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