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 ロスマリナス 10

女は不思議そうな顔をしながらも行き先を口にした
その答えを聞いて自分の眉根が寄るのが分かった
頼まれたというその届け先は地下街ではよく知られた場所だった

良くない奴らが屯する建物で、こいつの様な女などいいカモになるだけだ

どこかでこいつを見かけた奴らの仕業か
地下街の住人が都を出歩くこともあるかもしれない

どっちにしろあんな所に真剣にハーブの様な嗜好品を欲しがる人間などいないのは明白だった



…行かない方がいい
そう、口を突いて出ていた



それを聞いて、その女も今度こそ体ごとこちらへ向き直る

堀の深い大きな瞳が何か言いたげに無言でこちらを見つめる
理由を聞きたがっている顔なのは良く分かった、が詳しく説明する気もない

地下街で襲われたら場合によっては命が助かるかどうかも分からない


こいつの見た目からして地下街のことなど疎いのだろう

純真そうな、世間知らずそうな綺麗なその服と顔をもう一度見下ろした


無暗に地下に行くもんじゃねぇ、

今回は俺が代わりに断っておいてやるから
植物を配るならこの辺りだけにしとくんだな、
口早にそう伝えるとその返事を待つことなく馬を蹴った


これでとりあえずハーブの礼にはなるだろ、
と思いながら調査兵団本部へ続く道を駆ける

本当にわざわざ地下街へなど断りに行くわけがなかった

全てを詳しく、優しく説明する義理もない
最終的に地下街に行くか行かないかはあの女次第だ


これでもまだ下に行くようなら救いようがない


たとえ死んでもその報せさえ届くわけもないので、ここから先は自分には関係のないことだと思った



  


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