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 アリビンゲーブ 39

−−−−−その壁外調査は、結果としてはあまり大きな成果は得られなかった。

私自身たったの数度ではあるが壁外の経験者として数えられる為、まるきりの新兵を前に弱音を吐いていられなかった。

今回の目的は外界へ行って戻ってくるだけだと伝えられていたが、それにしては事前訓練に力が入り過ぎていた感は否めない。

実際には何が行われたのか私達のような下級兵士には知る由もないが、通過地点では知らされていなかった形へ誘導され、いくつかの班とはぐれてしまった。

その後の撤退命令までの時間にもかなりの間があった為疑問が残る。
上層部の人達は何を考えているのか…。

巨人を捕獲する為の作戦かとも思ったが、見た限り躍起になってまで捕まえようとはしていなかった。
途中何匹かの巨人と出くわし戦闘となったが、幸い奇行種も精鋭班の手によって一掃されたことで、被害の拡大は防がれた。

…大きな被害はない、とは言っても何人もの尊い命が犠牲になっている。
何度もの戦闘を生き残って来た兵士も例外では無い。

壁の外に出ればいつだって現実は残酷だ。
何度か危ない場面もあったが、私は今回も生き延びることが出来た。

だが、自分の実力で生き残った、と胸を張って言える状況では無かった。
…目の前で絶命していった兵士達は自分の代わりだったような気がした。

運が良かったのだとしか思えない。
運も実力のうち、なんてよく言えたものだ。

生き残ってやると息巻いた割には、自身の未熟さを痛感する壁外調査となってしまった。
私の班は死傷者を二人出してしまい、全班員心身ともに満身創痍で撤退命令の信煙弾を確認した。

…ああ、やっと帰れる。

見上げた空は果てしなく広がっていて、どこか恐ろしくも思えた。
この空の果てには何があるのか。

遮るものが何もない、突き抜けるような青い空。
空の青さはその下で流れる赤い血すらも包み込むような禍々しさも秘めているようだ。

こんなにも天気は良いのに、どこか気味が悪い。

こんなにも空は美しいのに、その下に広がる光景はどこまでも残酷だった。



  


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