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 アリビンゲーブ 34

わけが…分からない。

彼が去った方を見ながら、開いた口が塞がらなかった。
足の力が抜けて、ずずず、と壁を伝ってへたり込む。

なに、いまの?
なんで、キスなんか…


どくどくと、今更思い出したように心臓が早鐘を打つ。
兵長の突然すぎる行動に私の心臓さえもついていけないらしい。

キスの定義ってなんだっけ。

彼の行動を見ているとキスに対しての意識が根本的に違っていると感じる。
これが甘いキスだとしたら時間も惜しんで会いに来る恋人に見えたかもしれないが、彼の態度は決して甘いものではない。
どちらかというと苛立ちを抑えきれない、といった方がしっくりくる。

何に苛立っているの?
私の事が嫌になったわけではないの?

こんなところで、誰かに見られたらどうするつもりだったのか。
加えて彼は髪の留め具も持ち去ってしまった。
…一つ一つの行動をしっかり説明してほしい。

毎度の事だがヒントとなるはずの彼の言葉をもう一度頭の中で再生する。

憲兵団に気をつける…?
どうやって?

調査兵団と憲兵団のいざこざの事を言っているのだろうか。
それならば、私には何も関係のないことだ。
彼らとは接点らしいものも無い。
そんなことは上司の彼がよく知っていることだと思うが。

そんな意味の無いことを彼が言うだろうか?
いつだって彼の言動は予想出来ない。

彼のいいように振り回されている気分だ。
…ただ、悔しいことに嫌な気分ではない。

こんなにわけが分からない事をされているのに、まだ彼が自分を相手にしてくれて…嬉しい、とさえ感じているのだから。



  


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