△ アリビンゲーブ 25
日もまだ昇らないうちにふと目が醒めた。
見慣れない壁の色に、家具の配置。
あれ?
どこだっけ、ここ…。
次いで優しい香りに頭が追いつく。
あ、兵長の部屋にいるんだっけ…。
睡眠時間が短かったので瞼が重いが、早く宿舎に戻らなくては。
上手くいけばサシャが起きる前に部屋に戻れるし、もう一眠りできるかもしれない。
そう考えて、身を起こそうとすると、
後ろから腰のあたりに腕が回った。
…!?
ぐいっとベッドに押し戻されると兵長の身体の下に組み敷かれた。
「あの、兵長…?」
またあの体制で首元に頭を埋められているので彼の顔が見えない。
寝ぼけてる?
人類最強が?
すっと耳元で息を吸い込む音が聞こえた。
「……お前、…何かしたか?
まだ甘いがかなり……良い感じだな…」
ポツポツとなにか言っていたようだが、あまり聞き取れなかった上に意味が分からない。
この人は人に理解してもらうという気がないんだろう。言葉は発していても、独り言に近いので主語も述語も、ついでに説明する気すら無いのだ。
一々気にしていたら頭が持たない。
私に出来ることといえば、彼の行動を見守ることくらいだ。
そう思った次の瞬間、ばさりとブランケットをはいで彼が顔を上げた。
その瞳はぎらりと静かに光り、完全に覚めているようだった。
この男が寝ぼけるわけが無いか。
「悪いが、前言撤回だ。」
…?
どの前言ですか?
彼に言われた言葉を思い出そうとしたが次の瞬間、下半身に彼の手が伸びてきた。
「!?兵長、なん…」
身を捩って逃れようとするが、器用に体を固定されて下の寝衣を剥ぎ取られる。
大腿から腰の辺りをくすぐる様に触れて行く彼の指が、くすぐったさの中から絶妙に感じる点を見つけ出して行く。
「…あ…っ」
途端に甘い声が口から溢れる。
そんな風に触られると、弱い。
いつだってスイッチが入ってしまうようで、はしたないと分かっていても抗えない。
彼の元に通う様になって気付いたことだが、私の体には彼にしか分からない性感帯があるようだ。
日常生活の中でまったく使っていなかった部分が女として開花していく。
それは腰だったり、背中だったり、首だったりするわけだが、自分で触っても体は全く疼かない。
それなのに彼の手が私の身体を這うだけで、一つ一つが素直に、敏感に反応する。
こんな感覚は知らない。
こんな自分は知らない。