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 スチータス 10

……?


左手に、熱い体温を感じる。

一気に意識を引き戻すと、ぐるんと頭が回転した気がした。

無理やり瞼を持ち上げると、ぼんやりと握られた自分の手が目に入った。


え?


状況が飲み込めない。
私はベッドにうつ伏せに横になっていて、枕に頭を乗せている。
顔が左向きなので左手に誰かの手が重ねられているのが見える。

重い視線をゆっくりと上げると…恋い焦がれた彼がいた。


夢?

…にしては、やけにリアルだな…。


「…リ…ヴァイ……?」


そう呼ぶと、彼は椅子から立ち上がって私の長い髪をよけ、首筋に口づけた。


「何度も呼ぶな。…聞こえてる」


熱い唇と、彼の香りを感じる。
…夢じゃない。


「…馬鹿野郎が」


頭がぼんやりとして言い返すことも出来ない。

そのまま彼の熱い体温は唇が触れるか触れないかの距離を保ったまま首から背中に移動し、口づけ、甘く噛み付く。

そこで、自分が服を着ていないことに気付いた。
下半身にはシーツが掛けられているが、上半身は露だ。


「わ、私、服…っ、うっ…!」


久々に与えられる甘い痛みに背中を強張らせると、背中と腰のあたりがびきっと引き攣った。

思わず手をやると、丁寧にガーゼの上にテーピングが貼られている。


「…ああ、治療の為にな。
砂まみれだったんで湯で流した。」


掠れるような声が背中から聞こえる。

治療?
そういえば、私巨人に突っ込んで…。


がりっ


「い…った…!」

少々強めに噛み付かれ、痛みに顔をしかめて彼を振り返る。
たったそれだけの事にも背中が悲鳴を上げる。


「背中を思い切り打ったんだ、後先考えずに突っ込みやがって。
死にたかったのか?」


やっとの思いで彼を振り返ると、瞳が静かに怒りを映している。


「そんなこと…」


ない、とは言い切れない。

自分の命に代えても部下を守りたいと思った。

自分にもっと力があれば、全員で生還出来た。


全員、で…。
脳裡に浮かぶ、助けられなかった三人の兵士の姿。

「私の、班は…?兵長…あの後、何があったの?」

なんで私と兵長がここにいるの?
ここはどこなの?

ちっ、と小さく舌打ちが聞こえた後に握られていた手を放され、ベッドがぎしりと大きく軋んだ。
両手を私の顔の前と背中の横に置き、私の上に跨ったようだ。


「ちょ、ちょっと…」

「あそこにいた奴らは無事だ。
怪我人はお前一人というわけだな。」


そのまま、耳に口づけられる。
私が耳は弱いと知っているのに、これでもかというくらい舐められ、甘噛みされ、嫌でも反応してしまう。


「…あっ、ちょっ、と、まって…!
いた…っ…背中、がっ…」


びくりと背中が反る度に、びりびりと痛みが走る。
痛さと甘い快感で意識が朦朧とする。


「……我慢しろ」


耳元で囁かれ、体が彼の体温を吸収したように熱くなる。

こんな彼は初めて見た。
いつだって私が嫌がる素振りを見せれば行為を中断してくれていたのに、それでも止めてくれない。

でも、こんな彼を望んでいた自分がいる。
夢中で自分を求めてほしいと、どこかでずっと思っていた。


「兵、…」

「じゃ、ねぇだろう。
俺の名前も忘れたか?」


そう吐息交じりに息を吹きかけられ、頭がくらくらする。

なまえ?

また、名前で呼んでいいの…?

愛撫しながらも右手で自分の体重を支え、腰に負担がかからないようにしてくれている。


嫌いになんて、なれないよ。


久々に感じる彼の全てに、涙が滲んだ。



  


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