△ スチータス 07
塔は30m、立体起動には問題ないが…。
作戦終了時刻にはまだ間がある。
撤退許可の煙弾もまだ確認できない。
考えている間にも近くの林から走り寄ってくるものもいる。
退却には間に合わない…!
「全員戦闘準備!!!!
塔にアンカーを差せ!!
近づいてきたやつから討伐する!!!」
その声を聞いて納屋からバタバタと班員が走り出てきた。
巨人の姿を確認し、一様に目を瞠っては立体機動で登ってくる。
新兵二人は言葉こそ発しないが、顔面蒼白だ。
剣を握る手も心許ない。
新兵の二人以外でお互い目配せをし、彼らにはなるべく塔の上で待ってもらうことに全員賛成だった。
眼下を睨むと、早くも一匹の巨人が敷地内に入ろうとしている。
「二人はもっと上まであがって。
私が出来る限り引き付けるから、馬が走れるくらい道が開けたら南の−−−リヴァイ班に合流して。」
そう言うと同時に壁を蹴り、スイングしながら納屋へ足を掛け、体を捻りながら巨人のうなじを刎ねた。
空中へ飛ぶと同時に彼の班がいるはずの方角を見渡すが、何の変哲も見られない。
煙弾も上がってはいない。
やはりおかしいのはこの場所だけ?
アンカーを巻き取って納屋に降り立つと、次々と到着する巨人に見下ろされる形となる。
途端、脳裡に彼の声が甦った。
『−−−数が増えても怖がるな』
『奴らを固まりで見る事で無駄なく動け』
『近すぎる時は離れて距離を取れ、全体を把握しろ』
−−−ここにいてもきりがない。
距離を取らなければ。
こんな数を相手にするのは初めてだが、不思議と恐れは無かった。
怖いのは自分の死より部下の安否だ。
ぱしゅ、と納屋からほど近い木にアンカーを放ち、巨人を誘導するように円を描く。
すぐさま私を捕まえようと手が伸びてくるが、それもぎりぎりで避けながら移動する。
何匹かは釣られて追ってくるが、全てではない。
内心舌打ちをするが、すぐに別の班員が降りてきて反対方向へと引き付ける。
木々の間をくぐり抜け、頭上を飛び越えながら一匹ずつ確実に仕留めていく。
私の腕力はたかが知れているので、リヴァイのように連続して切るのは不可能だ。
そうして着いてきた最後の四体目のうなじに切り込んだ時、ドオン、という衝撃といくつもの悲鳴が耳に飛び込んできた。