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 ナカロマ 87

ざぶ、ともう一度だけ頭の先まで水中に潜り、息を吐いて顔を上げた。

長くなった髪を指先で軽く溶かすようにしながら、顔にかかる分の髪も後ろへと撫でつける。

こうやって一人の時間を過ごすと、脈絡のない考えばかりが頭を巡る。

小さい頃から自分の時間はそうして過ごしてきたから、この時間は私の気持ちを落ち着けて毎日を過ごすために必要なものだった。


ごちゃごちゃといろんなことを考えてしまうのも自分の気持ちを見つめ直す大切な時間だ。

…その大半がリヴァイのことなんだけど…。


どのくらいの時間水に浸かっていたのか分からない。

温かいお湯と冷たい外気に交互に触れれば、何時間でもそうしていられる気がした。


そういえば足も大分血が巡って温かくなった感じがする。

無理に動かすことはできないからこうして外から血行を良くするのはかなり足にも良いはずだ。

月が空を移動したことに気付いて、その場で徐に立ち上がった。


そろそろ、帰った方がいいのかな。


さすがにずっとここにいることは出来ないし、病室から抜け出したと誰かにばれても大変だ。

また、近いうちにここに来よう。

次はソニャと来るのも良いかも。

彼女と来るときには水に入れるような服と着替えを持ってこようと考えると、とても楽しみになった。


…裸で入ったと言ったら絶対笑われそうだから、黙っておこうっと。


体もかなり温まったので服を置いておいた岸辺に向かおうとそちらへ体の向きを変える。

反対側まで行っていたので元いた場所まで戻るのは少し距離があった。


岸に近づくにつれて水温がお湯からぬるま湯に変わった。


足がつかなかった水嵩が胸の下まで下がり、それから更にお腹のあたりまで下がっていく。


ぽたりと、いくつもの雫が線を描くように肌を伝っていった。






湖岸の近くの岩に手を掛けた瞬間に、上から声がした。





「……無防備だな」






−−−!!



一気に心臓が飛び跳ねて、反射的に水の中へと体を沈める。


声がした方向に目をやると、さほど離れていない大きな岩場に誰かがもたれかかるようにして立っているのが見えた。

月が雲に隠れて一瞬暗闇に包まれ、その人のシルエットしか見えない、けど。



い、いまの声、は……



私が、間違えるわけがない。

でも、間違えであって欲しい。

誰か、嘘だと言って。



「リ…リヴァイ……?」



風が吹いて月がまた顔を出すと、静かにこちらを見下ろす彼が見えた。



  


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