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 ナカロマ 06

前を歩くリヴァイの後姿を追いかける。

隣を歩くのはおこがましい気がして、少し離れたところからその背中を見つめた。
今は隣なんて歩いたら心臓がおかしくなってしまうかも。
顔を見たいとあんなに思っていたのに、いざ会うとなんでこんなに恥ずかしいんだろう?

せっかく、会えたのに。
話したいことは数えきれないほどあったはずなのに、なぜか言葉が出てこない。

この一年と半年、色々あったんだよ。
リヴァイ、あなたはどうだった?
どう過ごしていた?

…それとも、やっぱり。
調査兵に来たことをまだ怒っているの?
そうならば、伝えなくては。
ここで、あなたの近くで頑張りたいって。

…よし、言うぞ。

「……リ、」

「エマ」

え?

…出遅れちゃった…。

「…なに?」


ふと、彼が立ち止まる。
体ごと私を振り返り、真正面から向き合う形になった。

どきどきと心臓が音を立てて、だけど彼の瞳から目を逸らすことが出来ない。
本部内を走る廊下には日が差し込み、風に揺れる木々からの木漏れ日もまた揺らめく。
彼の黒髪は日に透けて茶色に柔らかく光っている。

…綺麗…。

彼が口を開くその仕草も、一つ一つ私に沁み込んでいく。

「…お前には……しばらく本部の手伝いをしてもらおうと思っている」

予期せぬ話を聞いているはずなのに、私の全神経は彼の姿に注がれて、間延びした声が出た。

「手伝いって…?」

さぁ、と気持ちが良い風が中庭から廊下をすり抜けていった。

リヴァイの髪がさらさらと揺れる。
髪質が柔らかいのだろう。
触れて、みたいな。

「兵士とは違う位置で全体を補佐してもらう。
見習い、とでも思っておけ」

「え…!?」

見習いって!?

その言葉を聞いて、バチッと目が覚めた気分だった。

「そ、それってどういうこと?
調査兵にはなれないってこと?」

兵団の一員にもなれないのなら、壁外調査にももちろん連れて行ってはもらえないだろう。
人類の為に戦うと覚悟を決めてきたのに、これでは意味がない!

「…一応調査兵にはしてやる。
だが、一般兵士ではなく見習いとして、だ。
お前は憲兵の生活が長かったんだから、しっかり調査兵の仕組みを理解する必要がある」

仕組みって!
新兵もそれを体で覚えていくものでしょう?

リヴァイ…。

私がここに来ることをそんなに怒っていたの?
私なんかに戦えるわけがないと分かっているから?
戦力外だと、思っているから…?

「…私は、いつ調査に参加させてもらえるの?」

そう聞くと、今まで無表情だったリヴァイは眉をしかめた。
そしてまたあの瞳で睨まれる。
黒い底で紅く光るような、彼の情熱を隠すような瞳の色。

私は、彼の瞳の色がとても好きだ。

光に当たるとその瞳の色は一色では説明できない色へと煌めく。
冷静さを映す薄い青かと思えば、感情が波立つとその色も変化する。

彼の雰囲気と髪の色を人は漆黒だ、と言うけれどそれは違う。
彼の声色と態度がそれを隠すようにしているだけで、内側には真っ赤な熱を秘めている。

それが、ひどく魅力的なのだ。

「……お前の態度次第だ」

彼が口を開く。
私の、態度…。

生活態度とか、就業態度のことを言っているのならば自信がある。
これでも一年と半年、向こうで真面目に働いていた。

リヴァイは自分の判断を信じる人だから、今は何を言っても無駄なのは分かっている。
少々理不尽だが、裏を返せばこの課題をしっかりやり遂げることが出来れば彼も私の入団を認めてくれる、ということだ。


「…分かった。
エルヴィンにもそう言ってあるんでしょう?見習いでも手伝いでも、リヴァイの言うとおりにするよ」



  


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