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 ナカロマ 05

どれくらい彼と抱き合っていたかは分からないが、不意に背中をぽんぽん、と軽く叩かれて我に返った。
そのままリヴァイは背中の手を緩めて私を床へと降ろす。

「あ、ごめんなさいリヴァイ、私…」

突然抱き付いてしまった自分の行動に今更恥ずかしさがこみ上げる。

「……いや」

リヴァイは何事もなかったように床へ落ちた書類を拾おうとするので、慌ててそれを先に拾って纏めて彼へと手渡す。

彼はいつもと変わらない。
喧嘩別れしたことが嘘のようだ。
…抱きついてしまったのも、彼にとっては友人間のものと大差ないのだろうか。

…がっかりなような、ほっとしたような。

あ、あれ?
そういえば、私自分の荷物も持ってたはずなのに…?

「ああ、エマ、君の荷物はここだよ」

「え?」

手元に何も持っていないことに気づいてエルヴィンを振り返ると、私の荷物を持った彼の横にはいつの間に来たのか、三人の兵士がいた。

「エルヴィン!ごめんなさい、私ってば…!」

すぐにエルヴィンに駆け寄り、荷物を受け取る。
ちらりと目線を三人の兵士に向けると、三人とも何か変なものを見たような表情だ。

あ、私がまだ憲兵の服を着ているから?

「あの、皆さんも調査兵の方ですか?」

「え、あっ…と」

「そうです」

金髪を高い位置で一つに括っている長身の男と、その隣のくせ毛をツーブロックに刈り上げた髪型の男が答える。

「あの、失礼ですがあなたは?」

三人目の、黒い髪を短く整えた男に聞かれて荷物を抱えながらも姿勢を整えた。

「あ、失礼しました。私、エマ・ミョウジといいます。
本日付で調査兵団へ異動して来ました。
慣れるまではご迷惑をお掛けするかも知れませんが、よろしくお願いします」

そう言って小さく微笑むと、三人が揃って静かに返事をした。

「「「こちらこそ…」」」

そこで、エルヴィンがポン、と私の肩に手を乗せる。

「私の遠い親類なんだ。
お手柔らかに頼むよ」


「…団長の…」

「はぁ…。」

「それはもちろん…」


やはり調査兵には男性が多いのだろうか。
やけに視線を感じるけれど、女兵士がそんなに珍しいのかな?

「…お前ら、何をじろじろ見てる。
何か用があったんじゃないのか」

後ろからその様子を見ていたリヴァイが声を掛ける。

すると三人の兵士は互いに顔を見合わせ、そういえば、というような雰囲気を醸し出した。
一拍置いて、一番背の高い髪を結った男がエルヴィンに何か書類を手渡し、それについて説明しているようだった。


「お前は何してるんだ?」

「あ、エルヴィンに宿舎を案内してもらおうと思って。」


書類を見ていたエルヴィンが一瞬顔を上げ、少し大きめに声を出した。

「リヴァイ、私はちょっと手が離せないからエマを連れて行ってやってくれないか。
宿舎の後はキースに会いに行く手筈になっている」

「…ああ、構わんが」

「え?リヴァイ、忙しいんじゃないの?」

「…暇なわけではないが、時間が無いわけでもない。
こっちだ。ついてこい」


リヴァイが連れて行ってくれるの?
二人きりになれるなんて嬉しい、けど。
エルヴィン…まさか、わざとなわけじゃないよね?

「う、うん。じゃあお願いします。
エルヴィン、ありがとう。また後でね!」

既に歩き始めたリヴァイの後を追おうと肩だけでエルヴィンを振り返り、声を掛ける。
それを聞いて微笑みながらエルヴィンは右手を軽く上げた。



  


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