短編集 | ナノ


非日常5題--04


4.生ハムを探せ!


わたしの実家は世界的に有名な資産家で。
そんな家の娘でもあるわたしが超人レスラーの皆様とひょんなことで親密になりました。

そのためか。まさか地球という惑星自体を飛び出してしまうことになるとは一体誰が想像できたでしょうか。


…結論から言うと、今わたしはキン肉星のパーティに招待されています。
地球との交流を深めましょう、という名目のものらしいのですが…イマイチよく分かりません。

正直わざわざ地球外の惑星にまで出向く必要性はあるのだろうかと思ったりもするし。
まず地球外に行くこと自体とても費用の面では痛いのではなかろうか。そしてそんなに技術は向上していたのだろうか…と思っていたら。

そこはキン肉星の皆様が負担してくださるとのことで。
迎えにいらっしゃったのは笑顔の爽やかなキン肉星の方でした。


そんなことがあってわたしは今普段着ないようなドレスを身にまとい、パーティに参加しています。



交流を深めるもの、ということあって参加者は色々。
わたし達のような人間もいれば、有名な超人の方もいる。
…あ、あそこにいるのはイギリスのロビンマスクだ。スーツでも仮面かぶってる…だと…。

そんなことを考えながら、わたしは密かに立食パーティを楽しんでいた。
流石はキン肉星主催のパーティ。料理がまずすごい。
和食、中華、洋食、郷土料理などと余念がないくらい。
味付けもとても豊富で、見ていても実際食していても飽きが来ない。

そんなことを考えながら暫く歓談よりも食事に集中していたら、両親から「向うに貴女の好きな料理が沢山あったわよ」との一言。

ん。よくわかってらっしゃる。
所詮花より団子。美味しいものを食べたいと思うのは人間の性というわけです。


そんなことを考えながら、わたしは両親の指差した方面へと足を運んだ。
ほんと、いい年して食べることに重きを置いているあたりどうなんだろうとふと思ったけれど…。

仕方ないよね!うん、仕方ない!そう思い込むことにします。はい。


などと考えながら歩いていると、奇妙な男の人と遭遇しました。


キン肉マンみたいなマスクを被っていて。それでいて迷彩服に身を包んだ、男の人。

…パーティで迷彩服?どういうセンス?

相手に失礼だとは分かっていましたが、素直にそう思いました。
勿論思っただけで口に出さなかったけど、顔に表れていたのか。にこりとその迷彩服男はわたしに微笑んできた。

…マスクを被っているのによくわたし相手が笑ったって分かったな。なんだか雰囲気が柔らかくなったから、きっと笑ったんでしょう。そういうことにします。

すると迷彩男は微笑みながら、片手に持っていた生ハムをもしゃりと食べ始めた。


「あ」


ついうっかり声が出てしまう。
と、いうかなんだその行動は。
初対面の相手の目の前ですることだろうか。

いやいやそれよりなにより。


わたしが無類のハム好きだと知っての行動か。


それはわたしが狙っていたものだったのに。



「…そんな怖い顔をしていると折角可愛いのに台無しだぞ?」



酷く余裕のある様子でその男は話しかけてきた。

「余計なお世話です。さっきの生ハム、どこにありました?」

つとめて冷静にそう尋ねると、彼はすまない、今ので最後だったんだ!と快活に笑う。


なん…だと…?!


「さっきからころころと表情が変わって面白いな、君は」


どうやらわたしは一人百面相をこの名前も知らない男の前で繰り広げていたらしい。なんてこった。恥ずかしい。
でも、食べたかったのにな…生ハム。


「どうやらよっぽど食べたかったようだね」


むむぅ…さっきからわたしは殆ど話していないのに(というか一回しか口開いてないし)、全部考えてること当てられちゃってる。
なんなんだろうこの人。すごく恥ずかしいけど、けど、惹かれているのが自分でも分かる。

「ふむ…君さえよかったら今度一緒に食事でも行かないかい?
その時に、好きなだけご馳走してあげるよ」


「…ほんとですか」


あら、わたしったら。
食べ物につられるなんてそんなの小学生でもそんなことしないのに。

なんでこんな二つ返事でイエスと答えているんだろう、わたし。


「約束だ」


にかりと微笑む迷彩男を見たら、疑う必要性なんてどこにも無いな、と思った。
発言と行動はちょっとだけ変だけど…それでも彼の笑顔が綺麗だったから。
それに吊られちゃったわけですね、はい。



…はてさて。わたしの生ハム探しツアーはいつになることやら。
そんなことを考えながらわたしは彼と連絡先の交換をし。彼の名が迷彩男なんかじゃなくて、キン肉アタルだということを知ったのでした。






*:--☆--:*:--☆--:*
Fortune Fate


…無理矢理ですね。すいませんorz
アタル兄さんがあまりヘンタイちっくでないのは主人公と初対面だからある程度は自重しているというわけです。

09.6.16

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