短編集 | ナノ


非日常5題--03


3.ダブルチャンス:ペット賞


ふと、こたつに入っていたり。もしくは暖房のしっかり効いた部屋で過ごしていると。
酷く贅沢なことをしてみたいという、現代人ならではのどうしようもない欲が生まれてくる。

具体的にそれが何かといえば、『寒い時期にアイスを食べる』ことだ。
一つ二つではない。それはもう大量に、とアイドル超人・チェックメイトは思った。

贅沢極まりないことは理解しているが…それはそれ、これはこれ。
食欲という名の欲求に勝つことはできない。

気づけばコンビニエンスストアで棒アイスを大量に買い占めていることに気づく。



「だから、わたしのことを呼んだんですか?チェック」



些か…もといかなり呆れた表情でチェックメイトの向かいに座りながらアイスにくらいつく少女は話す。


「はい、独り占めするには勿体無いくらいの量ですからね」


にこやかに微笑みながらチェックメイトは話す。
全く、この超人は一体どのような思考回路を持ち合わせているのだろうかと少女は酷く疑問に思った。
…と、憎まれ口を脳内で叩いていても、結局はこの男の誘いに乗っているあたり、自分も同類なのだろうと。
彼女は冷静に判断した。


「おや…このアイスにはくじがついているみたいですね」

何本目になるのか分からないアイスの残骸ともいえる棒を片手にふと彼はそう呟いた。
…今更すぎる、ちゃんと包装紙の説明を読みましょうよとやはりこれまた脳内でつっこみをいれつつ。
そうだね、と生返事を一つ。

「アタリ!って棒に書いてあったら、買ったお店の人に見せたら無料でもう一本もらえるみたいですよ?」

「本当ですか?!それは素晴らしいですね!是非アタリに出会いたいものです」

無邪気な子供のような笑みを浮かべて彼は未開封のアイスに手を伸ばした。


「(まぁ、アタリが出てくる確率なんて…どうなってるのか詳しく知りませんけど…そうそう出てくるものでもありませんよね)」

冷めたことを考えながらも、彼の笑顔が見たいからアタリが出ればいいのになぁ、などとぼんやり彼女は考えるのであった。




…などと考えていたら偶然にも彼女の棒っきれに「アタリ」の文字が。


「…アタリ、でちゃいました」

「ほっ、本当ですかっ?!良いなぁ…羨ましいです。。」


心から羨ましそうな視線を少女に向け、チェックメイトは自分のアイスをぱくりと咥える。

そんな彼の様子に少女の母性本能とやらが刺激されたのか。どきんと大きく心臓をはねさせた後、彼女は顔を赤らめながら言葉を紡ぐ。


「…チェックさん、もしチェックさんがアタリ引いたら…ダブルチャンスでわたしをプレゼントしちゃいますよ?」



その一言で、一気にチェックメイトの目つきが変化した。


「今の言葉、本当ですか?」


声音まで変わってしまっている。


「…はい?」

「今の言葉は本当ですか?と聞いています。もし、私がアタリを引けば貴女を頂いて構わないんですね?」


しまった、と判断したときには既に時遅し。それまでの倍のペースでアイスを消費し始めた。
この人、目がマジだ。一体なにをさせられるのでしょう。ちょっと勘弁してくださいよ、と少女が脳内で延々考えているうちに事態が変わる。



「引きましたよ、アタリ」


にこやかな笑顔。彼の右手にはアタリと書かれた棒っきれ。



「では、私がひいたわけじゃないですけど…ダブルチャンスということで。ペット賞を頂きますね?」



にこにこと微笑みながら彼はわたしとの距離をナチュラルに詰める。


距離を詰め、笑顔を貼り付けたまま唇を這わせる。



「それでは、まずは躾から始めますね」





…嗚呼黒い。

こんなに彼は腹黒かったのか。してやられた。



そんなことを考えながらも、少女はされるがまま、仕方ないなぁと微笑みながら彼を受け入れるのであった。


*:--☆--:*:--☆--:*
Fortune Fate

なんかよくわかんない話。
ごめんなさい、上手く纏めれませんでした。ちょっと馬式誉れ落とし食らってきます。
やりたいことはあったんだけどなぁ…申し訳ないorz

09.6.16

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