短編集 | ナノ


非日常5題--05


5.週末幽体離脱ツアー



俺の彼女はちょっと変わっている。

…ごくたまに「ちょっと」などという言葉では足りない奇行に走ることもあるが…基本的には素直な可愛い彼女だ。


そんな彼女がまたよくわからないことを企画してきた場合、彼氏という立場の俺はどうすればいいのだろう。




「ジェイド!週末に幽体離脱やってみない?」



お願いだから目を耀かせながら言わないでくれないか。
反応に正直困る。

きらきらと俺を見つめながら、彼女は続ける。
片手には一枚のぺらぺら用紙。どうやらインターネットで幽体離脱のやり方をしらべてきた模様。
…まずそこからしておかしい。何故調べる。


「ほらほらジェイド、このサイトによると幽体離脱すると新しい世界が待ってるんだってさ!行ってみてよ!」

「ちょっと待って。行くのは俺なの?」

「ジェイドなら強いから大丈夫かなって」

「いくらなんでも他力本願すぎない?!俺、君の恋人だよね!!」


俺の渾身のツッコミも解せぬ…と云った様子の彼女に些か不安を感じて、最後の一言は声を荒げてしまった。
恋人相手にそんなわけも分からない、何の保障もないことを勧めてくるのだ。不安にもなる。


「当たり前だよ、ジェイドはわたしの一番大好きな人だよ?」


なにを今更聞いて来るんだという雰囲気を醸し出しながら彼女は言う。
だったらそんなこと勧めてこないでよ、と俺が返そうとするとそれを遮るように彼女は再び言葉を紡ぐ。



「幽体離脱って基本的になんでも出来るんだってさ。それに楽しみが増えるみたいだし、ストレス解消にもなりえるんだって。

…ジェイド、なにかと真面目だから。色々必要以上に抱え込んでそれが負担になってるんじゃないかと思って…」



真面目な顔つきで彼女はそう言った。最後のほうは少しぼそぼそと喋っていたからきちんと聞こえなかったけど、俺のことを本気で心配してくれているが故、ということは伝わった。
なんだよ、嬉しい。はっきり言って嬉しすぎる。

方法がアブノーマルだけど、そんなこと気にならないくらい嬉しい。

どうやらそんな気持ちは俺の表情に表れていたらしく。彼女が頬を赤らめながらそれを指摘した。


「…と、いうわけで」



…ん。彼女の目付きが変わった。きらきらとした、さっきみたいな視線を俺に送る。



「ちゃんと必要な道具とかわたしが用意してあげるから、やってみてよ幽体離脱!」


「諦めてなかったの?!」


「当たり前だよっ。丁度週末だし、最悪ぶっ倒れてもお休みが取れるし!さ、幽体離脱ツアーのはじまりっ!!」


「勘弁してッ!!!!」




その後、笑いながら俺にコーヒーを飲ませようとする彼女の猛攻をなんとか逃げ切り。
レーラァに頼み込んで彼女を説得して、そんなことをするもんじゃないとなんとか丸め込むことに成功したのはまた別の話。



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Fortune Fate


ジェイドでしたwwちなみにわざわざ幽体離脱の方法はググりました。
ちゃんとあるみたいですよ。幽体離脱にはまったっていうとこを参考にしました。

09.6.16

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