短編集 | ナノ


非日常5題--02


2.下僕賞「当選のお知らせ」


それは飲み会における悲劇だった。


彼女の右手に握られたのは一枚の紙切れ。
その紙切れに書かれた言葉はたった一つ。


「下僕賞」


ただそれだけだった。

つまり、このくじを引いた場合持ち主の下僕となり以下略というものだ。
ちなみにくじの束を持っていたのは、ドイツの超人。ブロッケンJrであった。
それが指すことは唯一つ。



「なるほど、お前がブロッケンの下僕になるってことだな?」

敢えて当事者達が触れなかったことをいとも簡単に言ってのける。

そこに痺れる憧れる。


一升瓶を片手に、豪快に笑いながらバッファローマンはそう言った。



「ま、酒の席での遊びだ。そこまで重く捉えなくて構わんが…何もしないってのは勘弁だぜ?場がしらける」



硬直状態のブロッケンの肩を掴みながら、今度はワイングラス片手にアシュラマンが続ける。その口元には不敵な笑みを浮かべて。

「はっはっは、違いねぇ。…ま、ココは若い二人に後は任せて。」

「邪魔者はさっさと退散しようか。」

酒を片手ににやにやと笑みを浮かべ、アシュラとバッファは既に酔いつぶれたソルジャーを抱えてさくさくと退室したのであった。




「あ、えっと…二人きりになっちゃいました…ね」



あはは、と渇いた笑みを浮かべながら少女はブロッケンに話しかける。
正直どのように接すればいいのやら彼女自身分からないのだが…何も話すことなく沈黙状態が続くよりはよっぽどマシだと判断した結果である。



「…この、くじ…。どうしますか?」



処分に困る、というか。

自分の運命をも決めてしまった一枚の紙切れをぴらぴらとさせながら少女は尋ねる。


しかしじゅんじょうこうはのブロッケンくんはどうにもこうにも『下僕』という言葉の響にとまどっているらしく、先ほどから放心したままぴくりとも動かない。




「あの、ブロッケン…さん?」





流石になにも言葉を発しない彼が心配になってきたのか。
彼女はブロッケンの顔を覗き込むように距離を縮めた。

相手の睫毛一本一本がすべてしっかりと確認できるほどの距離。


上目遣いがアウトだったのか、それとも起爆剤だったのか。


次の瞬間に少女はブロッケンに押し倒されていた。


耳元で囁かれるのは、まるで余裕のない彼の本音。







「…オマエは下僕だろう?少しの間、大人しくしていろ」







そうして噛み付くように、ブロッケンは少女の喉元に口付を落とした。




Fortune Fate

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ブロの出番がなくてばくしょう。
アシュラとバッファは良い飲み仲間。そしてアタル兄さんは酒に弱いという勝手な私の脳内設定。

09.6.16

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