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俺の報告からおよそ30分程で上司を含むプロヒーロー達が応援に駆けつけた。
アクスは結局ずっと意識を失ったままで、ヒーローと警察によってそのまま確保された。
名も保護され、ひとまず病院で検査入院をすることに。

…氏氏は今回の件で敵との癒着問題が明らかになり、逮捕された。
現場に乗り込んだ友人の警官に後から聞いたが、彼は屋敷の地下でずっとうなだれていたらしい。

その上で問題が1つ発生した。
義理とはいえ10年も自分を養育してくれた父親が逮捕されたという事実を名に伝えるかどうかということだ。
黙っていたとしても、何かしらの媒体で目にするのは間違いないのだが…いつこの話をするかが問題だ。

悩んだ結果、彼女が退院する日に打ち明けることを決意した。
病院をあとにし、俺たちが住んでいた部屋へ。そこで改めて今回の顛末を言い聞かせる。
氏氏がどうなったのか。何故逮捕されることになったのか。彼は彼なりに名のことを思っていただろうが、実際にしていたことは犯罪行為だったこと。
…流石に九条夫婦が氏氏の策謀によって殺害されたということだけは口に出すことはできず。
俺は胸中に留めることを決めた。この秘密は墓まで持っていくだろう。


「…と、いうのが今回起こったことだ」

「……」

「名……すまない。もっと心も体も落ち着いた時に話してやりたかったが、
 君の父は良くも悪くも有名人だ。テレビもネットも今はこのニュースで溢れかえっている。
 …だから、俺が見聞きした真実を少しでも早く伝えたかったんだ」

「……」

ぐっと言葉を唇をつぐみ、涙をこらえているのか、瞳はウルウルと揺れている。
彼女の胸中を思えば…無理もない。本当は声をあげて泣き叫びたいだろう。

それをこらえ、俺の言葉をゆっくり咀嚼する名。
ゆっくりと口を開き、震えながら声を出した。


「……ふみかげくん………。
 ……ずっと、わたしのことを騙していたとしても…それでもわたしにとっては、大切な父上だったよ。

 わたしのことを育ててくれて、守ってくれて、わたしのことを思ってくれたもん…それは本当だよ」

「ああ」


「…でも、わたし…もう、ひとりぼっちになっちゃった」


「 …名…」


とうとうこらえきれなくなったらしく、ぽろぽろと涙がこぼれ始める。
一筋、また一筋と涙が流れる。
我慢に我慢を重ねていたのだろう、無理もない。

止めどなく溢れる涙を両手の甲で拭い、嗚咽する名を俺はもう見ていられなかった。



「   名ッ」



震える肩をかき抱き、自分のもとへ引き寄せる。
驚いたように息を飲み込み、真ん丸な瞳に俺の姿を映す。



「…名……俺が、 俺がずっとお前の側にいる。隣にいる
 名はもうひとりじゃないんだ。俺を頼ってくれ。

 

 だから  俺と、結婚しよう」






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2017.09.04
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