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この間違った選択で、リヴァイ班の皆が死ぬんだ。


エレンがそう後悔し、迫り来る巨人の気配に自身も死を覚悟したー…刹那。



「撃て!!」



聞き間違える事などない、エルヴィンの強い声が森のなかに響いたと同時に、森の中に設置された対特定目標拘束兵器が作動する。
樽に詰めたワイヤー付きの銛を四方八方から射出することで巨人の間接を固め、その動きを確実に封じる事が出来る。今回、この秘密兵器を荷馬車に隠し、此処まで運んできていたのだ。


調査兵団は女型の巨人の生け捕りに成功した。



「え……」



あの巨人が身動き一つとれずにいる…この目を疑うような光景に、エレンの頭の中は真っ白になった。

もう追われる事はない。

突然死への恐怖から解放された面々は放心状態になっているが、リヴァイは息つく間もなく次の作戦の準備を始める。



「少し進んだ所で馬を繋いだら立体機動に移れ。俺とシャオとは一旦別行動だ。班の指揮はエルドに任せる」



流れるように話し、茫然としている班員達に強い眼差しを向ける。



「適切な距離であの巨人からエレンを隠せ。馬は任せたぞ、いいな?シャオ、ついてこい」



そう言うなりリヴァイは立体機動で一瞬にして森の中心部へと飛んでいく。シャオもそれを追いかけるべく、アンカーを巨大樹に突き立てる。飛び立つ直前に、シャオは振り向いて五人の顔を一人一人見つめると、微笑みながら言った。



「また後で!」



彼女の微笑みに生きている事を実感した五人は、口々にシャオに他愛もない言葉をぶつける。



「気をつけろよシャオ、女型がいるからな」


グンタ。


「近くで見て、怖がって泣くなよ?」


エルド。


「まぁたリヴァイ兵長に付きっきりかよ!ずるいぞお前、恋人という職権乱用だ!」


オルオ。


「職権って…あの兵長が公私混同するわけないじゃない。ねぇエレン?」



「あ、はい、そうですね!シャオさん、兵長に置いていかれますよ!」



「そうよシャオ、早く行きなさい!樹にぶつからないように、ちゃんと前見て飛ぶのよ!」



ペトラ。




「ふふ…行ってきます!」




古城で一ヶ月間も寝食を共にした四人と、これが最後の会話となるなんて、シャオはこの時想像もしていなかった。

7人全員で帰路につき、古城にて食卓を囲むシーンばかりを思い浮かべていた。









リヴァイは勿論シャオを置いて行ったりなどせず、二、三本先の巨大樹の枝の上で待っていてくれていた。隣にシャオが着地すると、リヴァイは頭を撫でてくれた。



「怖かったか?」



優しい声で尋ねれば、シャオは素直に頷く。
彼女を安心させるように頬を撫でて、すぐにリヴァイは表情を元に戻す。



「ここからが正念場だ。気を抜くな」



「はい!」



「お前は俺が死なせねぇからそこは安心していい」



「……兵長、」



「行くぞ」




次の言葉には返事をせず、曖昧に笑ってみせたシャオの言葉を遮るように、リヴァイはポイントを目指して飛び立つ。

彼女が何を言おうとしたか、手にとるようにして解ってしまった。


助からない時は遠慮なく見捨ててください。


そんな残酷な台詞を、あいつは笑顔で言おうとした。腹が立った。あいつの心臓は俺のものなのに。俺のものを蔑ろにしやがって。



猛スピードで木々の間を舞うリヴァイを、シャオはどうにか追っていく。真面目に訓練を受けていて良かった。以前の自分だったらきっと追い付けなかっただろう。



そして二人は、巨大樹の森のちょうど中心のポイントに到着する。


そこには女型の巨人が拘束されていた。
両手で項を抑えている格好を見れば、この巨人に知性があることは明白だった。それはエレンと同じく、中身が人間である事を示している。

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