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長い行為だったがそろそろ上り詰めようと、リヴァイが顔を歪めてシャオの腰を強く掴んだ時に、


…それに、気付いた。




「……っ、」




呆然と此方を凝視する金目。


大きな目は興奮しているようで、獣のようにギラギラと輝いている。それでもあどけなさは残っていて、リヴァイと目が合っているのに気付くと瞳は大きく揺れた。


エレンは、あ、と小さく言葉にしたようだったが、幸いにも行為に耽っているシャオには気付かれていていない。





出ろ、と。




リヴァイが視線だけでそう指示すると、エレンはさっと身を翻して消えた。




…残酷な現実から逃避するように、シャオはリヴァイの身体を求めてきた。


先程シャオは部屋に入るや否や自分で服を脱ぎ、リヴァイの服も脱がせ、口淫し始めたのだ。最初リヴァイは止めようとしたが、熱に浮かされたシャオの目は貪欲で、止めても無駄だと判断した。



その後部屋で数時間も身体を重ね、互いの体液でぐちゃぐちゃになった身体を清めようと浴室にきたが、シャオはなお、リヴァイを求めてやまない。





あたたかな体温を求めて、やまない。






◆◇◆◇◆◇◆






翌日。


談話室に現れたのはリヴァイとエレンの二人だけだった。


昨夜のこともあり、エレンは気まずそうに視線を逸らしたが、リヴァイは涼しい顔で席についた。

今日はエルヴィンが尋ねてくる予定になっている。昨日調査から帰還した後、エルヴィンは休息もとらず中央へ調査の報告に行った。その結果を持ってくる予定だ。




「…遅ぇな」



お互い黙したまま30分も経過すると、流石に退屈だったのかリヴァイはぽつりと呟いた。



「エルヴィンの野郎、待たせやがって。大方…クソがなかなか出なくて困ってんだろうな」



「…ハハ…」




らしくもなく冗談を言うリヴァイに、エレンは下手くそに笑って見せる。




「昨夜は悪かったな…うっかり鍵を閉めるのを忘れた」



「………!い、いえ、俺も…すみませんでした」




覗いちゃって、と、エレンは頬を真っ赤に染めて俯く。まだ純朴であるエレンに昨日の光景は刺激が強すぎたのだと察すると、リヴァイは鼻を鳴らす。



「お前にはまだ早かったか」



「そ、それは!どうでしょう!」



「そうムキになるな。認めてるようなもんだぞ」



「うっ…」



何せ恋愛経験がないのだから、エレンは当然そっちの経験もない。訓練兵時代の男子寮では、如何わしい本の貸し借りもあったが、実際目にしたものはそれ以上にいやらしかった。



「まぁ15なら、まだ経験がないヤツの方が多いだろう。安心しろ」



「……兵長。今日は…よく喋りますね」



「バカ言え。俺は元々結構喋る…」




気を遣ってエレンを元気づけようとするリヴァイの大人な対応に、エレンは胸が締め付けられる思いだった。


四人を死なせたのも、兵長が足を怪我したのも、シャオさんが声を失う原因を作ったのも、俺なのに。この人はそれを責めない。



「…すいません。俺が…あの時…
選択を間違えなければ…」



項垂れてそう呟くと、昨日枯れた筈の涙がまた滲んでくる。謝って済む問題じゃないのに、口を出るのは頼りない言葉ばかりだ。




「…言っただろうが。結果は誰にもわからんと」




普段より幾分柔らかい声音でそう言われ、リヴァイは自分を慰めているのだと気付く。

俺にはわからない、とあの時リヴァイが言っていたのをエレンは思い出す。きっと今のエレンと同じように、後悔の念に苛まされた経験が彼にもあるのだろう。


幾度も地獄を味わったのだ、この人は。



何も言えなくなったエレンと、多くを語ろうとはしないリヴァイ。二人だけの談話室が音を失った後、木の扉をノックする音が響く。



「遅れて申し訳ない」



謝罪の言葉と共に、がちゃりと扉を開いたのはエルヴィンだ。その後ろから現れた人影に、エレンは目を丸くする。



「アルミン?ミカサも…」



二人とも昨日の疲労を感じさせない、凛とした表情をしている。最後に現れたハンジが扉を閉めると、皆それぞれ席につく。



「シャオは?」



「部屋だ。あいつは寝かせとく」



「うん、そうだね。賢明な判断だよリヴァイ」



彼女には休息が必要だから、とハンジは微笑む。

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