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壁の中に帰還した調査兵団は、人々から非難の目を向けられ、心ない声を浴びせられた。
数が半分に減り、ボロボロになった兵士達を見る人々の目は冷たく、税金の無駄遣いだとぼやく声も多く寄せられる。
ーーー…今回の壁外遠征に掛かった費用と損害による痛手は、調査兵団の支持母体を失墜させるに十分であった。
エルヴィンを含む責任者が王都に招集されると同時に、エレンの引き渡しが決まった。
◇◆◇◆◇◆
時は戻り、壁外調査から帰還したその日の夜。
『シャオ、ショックで声が出せないみたいなんだ。けど安心してね、恐らく一時的なものだから。一応、何かいい薬があったら持ってくるけど…』
ハンジに告げられた話を受け止めリヴァイは無言で頷くと、エレンとシャオの二人を連れて帰路につく。
今朝、七人で出発した筈の古城へ、三人で帰還した。
巨人化の影響で疲弊したエレンは、帰還してすぐに地下室へ向かった。お前ら今日はもう休め、御苦労だったな、とリヴァイが労ってくれたからだ。
リヴァイは女型と対峙した際に左足を怪我しており、シャオは声を失った。ボロボロになったリヴァイ班を見て、エレンは失意のドン底に居た。
俺のせいだ。
俺があの時巨人化していれば。
あの時、仲間ではなく自分の力を信じていれば。
俺が選択を間違ったからーー…。
ぐるぐると巡る思考に対し身体は休養を必要としていて、地下室のベッドに横たわると、泥のように眠ってしまった。
ー…その後、エレンが目を覚ましたのはそろそろ日付が変わろうとしている時分。
悪夢に魘され寝汗をかいている。
その気持ち悪さに、風呂に入ろうと思い立ち、静まり返った古城の廊下を歩く。
この古城は七人で使用するのにも広大すぎたが、それが三人に減ると余計に心細さが増す。
ひたひたと暗い廊下を歩くと、途中でオルオが使用していた部屋の前に差し掛かる。
主を失った部屋からは、やはり物音一つしない。
無意識に、エレンは扉をコンコンとノックする。
返ってこないとわかっていても。
昨日までだったらすぐに不機嫌な顔のオルオが扉を開け放ち、ガキみてぇに悪戯すんな、とっとと寝やがれと怒鳴られただろうに。
今は何度叩いても、オルオは起きてくれない。
なんで、なんで、
コンコン、と扉を叩いていた手は強さを増していく。
ダンダン、と強く拳を打ち立てる。
何度も何度も。
「うぐっ…ひっ…オルオさぁん…!!」
泣きながら扉にもたれ掛かり、溢れる涙を拭おうともせず、エレンは子供のようにわんわん泣いた。
いつも突っかかってきては、エレンを小馬鹿にしていたオルオ。しかし本当は面倒見がよく、エレンが訓練で解らないことがあれば不機嫌ながらも教えてくれたし、心ない声に落ち込んでいる時は笑わせてくれたりもした。同期と離れたこの一ヶ月、彼だけは同じ目線で遊んでくれた。エレンにとってオルオは兄のような存在であった。
目が腫れ上がる程泣いた後、エレンは無言で涙を拭って立ち上がり、ふらふらと覚束無い足取りで風呂へと向かう。
鍵がかかっていない扉を開けると、陰になっている浴槽の方から物音がするのに、エレンは気が付く。班には女性も居るので風呂に入るときは鍵を閉めるルールだったが、開いていたからエレンは入れたのだ。中には誰もいない筈なのに…。
不審に思い、陰からそっと中を覗き込むと、そこにあった光景を見てエレンは固まった。
そこでは、一組の男女が全裸で交わっていた。
シャオの白く柔らかな尻が、床に足を投げて座っているリヴァイの上で跳ねている。
はぁ、はぁ、という呼吸と、粘着質な水音が、浴室を淫靡な雰囲気で包んでいた。
シャオは髪を振り乱し、快楽を得ようとする後ろ姿は淫らであった。声が出せないため吐息だけが響いていたが、それが余計に厭らしく感じる。
その一方でリヴァイの方は眉間に皺を寄せて動こうとせず、その姿は黙って行為を受け入れているようにも思えた。
リヴァイの肩に手をつき、より快楽を得ようとしたのか、彼女が腰をくねらせる姿を目にして、エレンはごくりと唾を呑み込む。
男を求める彼女の姿は、普段の柔らかい雰囲気を纏うシャオとは全くの別人だった。
シャオはリヴァイの手をとり乳房へと導く。
大人しく要望に従い、リヴァイは胸を優しく揉む。時折飾りに指を這わせ、優しく愛撫をした。恍惚と息を吐くシャオにリヴァイは目を細める。
彼女の髪を耳にかけてやり、擽るように耳を撫でると、既に理性を手離しているシャオは妖艶に頬笑む。ペロリと唇を舐めたのを見て、リヴァイが一度瞬きをすると、彼女の方から唇を重ねてきた。
情熱的に舌を求められそれに応えてやる。
舌と舌を合わせたまま唇を話すと、シャオはまた小刻みに上下に動き出した。
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