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古城での生活、一日目の夜。

掃除に丸一日を費やしたリヴァイ班は夕食後、紅茶を飲みながら今後についての話をしていた。



「我々への待機命令はあと数日は続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えてると聞いた。それも今期卒業の新兵を早々に混じえると」



「エルド…そりゃ本当か?」



エルドの話に食いついたのはグンタ・シュルツ。討伐7体、討伐補佐40体。寡黙でリヴァイと同じく表情が乏しいが、人一倍真面目な男だ。



「ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵には堪えただろうによ…」



そして、優しい。トロスト区攻防戦にて、同期が巨人に食われる様を目の当たりにした新兵達の気持ちに寄り添い、グンタは悲痛な表情を見せる。


「本当ですか兵長?」



ペトラが問うと、「作戦立案は俺の担当じゃない」とリヴァイは答える。作戦を立てるのは調査兵団団長であるエルヴィン・スミスだ。



「ヤツのことだ…俺達よりずっと多くの事を考えてるだろう…」



エルヴィンが何を考えているのか計り知れないが、リヴァイは全面的にエルヴィンを信頼していた。地下街で有名なゴロツキだったリヴァイがエルヴィンの元に下った事からも、その信頼関係は見てとれる。しかし唯一、シャオの事だけは譲れなかった訳だが。


すると突然、食堂の扉をノックする音が響く。



「こんばんはーリヴァイ班の皆さん!お城の住み心地はどうかな?」



「あ…ハンジさん」



ノックの後に聞こえてきた声で、すぐに声の主が解ったシャオは顔を綻ばせる。エレンも表情を和らげるが、それと同時にシャオ以外の面々の顔がひきつっている事に気付いた。

ハンジは勝手に扉を開けて中に入ってくると、空いている席に腰を下ろす。シャオの隣だ。


「やぁシャオ!明日は待ちに待った実験なんだけど」


ポンポンとシャオの頭を叩き、ハンジは向かいに座るエレンにも目を向けた。



「エレンにも協力してもらいたい!」



「実験…ですか?」



何やら不穏な響きにごくりと唾を飲み込むと、シャオはエレンの警戒心を解くように説明を始める。


「ハンジ分隊長は巨人の生態調査を担当してるんだよ。この前トロスト区で2体の巨人を生け捕りにしたのは知ってる?ソニーとビーンっていうの!因みに4m級がソニー、7m級がビーン」


笑顔でそういうシャオを、エレンは何故か怖いと思ったのだった。



「そうそう!明日の実験はそれはもう…最高に滾るヤツだよ」


頬を赤らめ興奮した様子で、ハンジはリヴァイに向き直る。


「リヴァイ!明日のエレンの予定は?許可を貰いに来たんだけど」



明朗快活なハンジに対し、リヴァイは至って冷静沈着だ。この二人の温度差はいつ見ても凄まじい。まるで南国と北極に居る二人が会話をしているみたいだ。それなのによくつるんでいるのを見かけるから、全く人間というのは不思議な生き物である。



「…庭の掃除だ」



「ならよかった決定!!あとさ、シャオも借りていい?過去のデータを引っ張り出すの手伝ってもらう予定だから」



「シャオは駄目だ」



そこはきっぱりと断ったリヴァイに、シャオは目を丸くする。いいじゃんケチー、とハンジが抗議をしているが、リヴァイは頑なに断っている。ブーブー文句をたれるハンジを鬱陶しそうに払い除けながら、リヴァイはシャオを一瞥して言った。



「そいつは明日俺と一対一で立体起動の訓練だ。他の四人は引き続き城の中の掃除。庭もな」



「えっ…」



「えええ!?兵長自らご指導するんですかぁぁ!?」



ガタンと椅子を倒して立上がり声を上げるオルオに、リヴァイは静かに「そうだ」と頷いた。リヴァイ自ら指導してくれるとは、オルオからしたら眉唾ものであるが、シャオの顔は真っ青だ。ペトラ、エルド、グンタの三人は彼女に同情の目を向けていた。



「シャオ〜お前代わってくれぇ俺と!!」



「かっ…代われるものなら代わりたいよ…」



泣きついてくるオルオに思わず本音を溢してしまう。リヴァイ兵長とマンツーマンで立体起動の訓練なんて恐すぎる。仕事の時のリヴァイは厳しいのだ、例え相手が恋人であろうと情け容赦ない。

明日はきっとボロボロになるまで森の中を飛ばされるだろうと予測し、シャオはガクリと肩を落とした。


全員の予定が決定したところで空気の読めない少年、エレン・イェーガーはハンジに向けて質問を投げ掛ける。



「ところで巨人の実験とはどういうものですか?」



その問いかけを受け、キランとハンジの瞳が光った。ハンジに巨人の話を聞いてはいけない。何故なら聞いたら最後、数時間は離して貰えなくなるからだ。調査兵団に入って一年は経過した者なら…否、此処に居るエレン以外全員が知っているルールだ。
ただ一人例外で、自分から望んでハンジの話を聞きに行く変わり者も居たりする(シャオのことだ)。


ハンジに捕まってなるものかと皆次々と席を立ち、自室に戻っていく。シャオは残りたそうにしていたが、リヴァイに腕を引っ張られた。



「話を聞いてなかったのか?明日に備えてさっさと寝ろ」



「は、はい…!ハンジさんとエレンにお茶を淹れたらすぐに寝ます!」



ビシッと敬礼を返し、「明日はよろしくお願いします、おやすみなさい!」と頭を下げるシャオをじっと見つめた後、リヴァイは無言で部屋を後にする。
彼の背中が見えなくなるまで見送った後、シャオは何か思い詰めた様子で、早速エレンに語り出しているハンジをすがるような瞳で見つめた。

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