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 シンデレラ -4-

「ったく、何で俺が工藤の付き人役やねん!」

「まぁ、落ち着けよ、服部。俺の母さんが勝手に決めちまったんだから」

「それでも他にええ役がなんぼでもあるやろ?魔法使いとか」

「魔法使いは適役がいるから譲れないんだと」


王子様と付き人はあの日硝子の靴を残して消えてしまったシンデレラを探しに街へと出て来ていました。
しかし、硝子の靴がピッタリな娘はなかなか見つかりません。
次が最後の屋敷です。


「お邪魔するでー。城からの使いで、この硝子の靴がピッタリな娘探しとんねん。王子の嫁にするんやと」

「新一くんの嫁?あたし辞退するわ」

「あたしも相手が新一なんて嫌」


今まで喜んで自分だと言い張り、靴に足を通す娘ばかり見てきたので、あっさり辞退したシンデレラの継母と継姉の反応に付き人は面食らいました。

しかし、王子もこっちから願い下げだと言う態度を隠しもしません。


「ほんなら、そこの嬢ちゃん。履いてみてくれへんか?」

「いいけど…それ、あたしのじゃないよ?」


素直に快諾してくれたシンデレラの継妹までが乗り気じゃない様子に、この家はどないなっとんねん!と付き人は額を叩いて顔を覆い、天を仰ぎました。

果たして靴は、娘より少しばかり大きかったのです。


「この家に他に娘はおらへんのか?」

「いるわよ?」

「お昼の支度が出来ましたけど…お客様ですか?」


すると、タイミングよくシンデレラが部屋に入って来ました。

事情が分からないシンデレラは、上等な服を着ている二人を見て、自分の薄汚れた格好を思い出し、中へと引き返そうとしたのですが、いつも意地悪な継母がそれを止めました。


「待ちなさいよ。あんたにお客さんなんだから」

「え?」

「この靴を履いてみてくれませんか?僕の推理通りなら、貴女にピッタリの筈なんです」


王子に頼まれてしまっては断れる筈もなく、自分への特注品だと言い残した魔法使いの言葉を思い出しながら、シンデレラはゆっくりと靴を履きました。

するとどんな娘にも合わなかった硝子の靴がピッタリと入ったのです。


「迎えに来たぜ?なまえ。ったく、こんな町外れの辺鄙な場所で、名前まで変えて生活すんなよな。探すのが大変だったじゃねぇか」


口では文句を言いながらも、王子の表情は嬉しそうに綻んでいます。

しかし、王子がシンデレラを抱き上げた瞬間、シンデレラは王子の腕の中から消えていました。


「上や!工藤」


付き人の声に上を見上げると、白き罪人の姿がそこにはありました。

風にマントを靡かせながら、シンデレラをしっかりと姫抱きしています。


「テメー、どういうつもりだ!?なまえを離しやがれ!!」

「それは出来ない相談ですね」


全身白ずくめの彼は、王子たちには逆光になってよく顔が見えませんでした。

でも、シンデレラは違います。


「また会おうぜってこのことだったの?」

「お礼してくれるんだろ?なら、今日一日付き合ってくれよ」

「今日じゃなきゃダメなの?」


キッドとシンデレラは下のメンバー、特に王子に聞こえないように話していました。


「今日じゃなきゃ意味がねーんだよ」

「今日って……あっ!」


シンデレラが何かに気付いて大きな声を出そうとしたのを、キッドはシンデレラの唇に人差し指を置くことで静かにさせました。


(今日って快斗の誕生日だ)


「夜にはきちんとお送りしますよ。名探偵?」

「バーロォ!そういう問題じゃねぇだろーが!!」

「新一!ちゃんと帰って来るから今日だけは見逃して!」

「は?なまえまで何言って……」

「じゃあ、なまえ姫はお借りしますよ」


王子が混乱している間にキッドの姿は見えなくなっていました。

騒ぎに気付いて継母が出てきた時には時すでに遅し。


「キッド様ぁああっ!連れてくならなまえじゃなく、あたしを連れてってー!!」


継母の叫び声だけがその場に木霊していました。

その頃、キッドとシンデレラは二人でハンググライダーで空の旅を楽しんでいました。


「快斗、誕生日おめでとう」

「サンキュー。さぁて、今日は何処に付き合って貰うかな」


シンデレラの笑顔につられるように、ポーカーフェイスを外したキッドは素の笑顔をシンデレラだけに見せていましたとさ。





おしまい

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