▼ シンデレラ -3-
無事にお城についたシンデレラに、魔法使いは道中から何度も繰り返して来た忠告を再び口にしました。
「いいか?俺がかけた魔法は12時の鐘の音と共に消えちまう。それまでには家に帰れよ?少なくとも城外には出ろ。いいな?」
「もう分かったってば。でも、今日はありがとう。せっかくの先せ…じゃなかった。王様からの招待状をムダにしなくて済んだもの。また今度お礼させてね」
魔法使いと別れたシンデレラはお城の中へと入っていきました。
「お礼、ねぇ…。何して貰うかはもう決まってんだけど、な」
魔法使いは不敵な笑みを浮かべると独り言出て、森のなかへと消えていきました。
一方、シンデレラはと言うと、門番に招待状を見せた途端に笛を吹かれてしまい焦っていました。
え?今日は無礼講のはずなのになんで?
と考えていると国王とお妃様が揃って出てきました。
門番はと言うとお二方の自らのお出ましに、もうガチガチに固まっています。
まぁ、この国で一番偉い人たちが突然のご登場だから無理もないですが。
御愁傷様です。
「やん!なまえちゃん、すっごく可愛い!!」
お妃様は出てきた勢いそのままにシンデレラに抱きつきました。
「有、希子さ…お妃様、苦しっ!!」
「有希子、なまえ君が苦しがってるから、そろそろ離してあげなさい」
「そんなこと言って、実は優ちゃんも可愛く着飾ったなまえちゃん抱き締めたいだけなんでしょ?」
「はは、バレてしまったか」
お妃様から解放されたシンデレラは、次は王様に優しくハグされ、頬にキスされましたが、シンデレラも王様の頬にキスを返して抱きつきました。
「今日のなまえ君は姫と言う言葉がピッタリだ。そのドレスもよく似合ってるよ。どうだい?この後1曲私と踊ってくれないかい?」
「もちろんです!先生…国王様のお誘いを断るわけないじゃないですか!」
シンデレラが満面の笑顔で返事をすると、お妃様がすかさず間に入りました。
「それにしても今日のなまえちゃん、ホントにお姫様みたい!衣装はあたしが準備してあげたかったけど、その衣装には負けちゃうかもね」
むぎゅーとまたシンデレラをお妃様が抱き締めました。国王たちが出てきてからの一連の出来事は、もちろん門番は見てみぬフリです。
「その前に記念撮影しましょう!新ちゃんはどっちでもいいけど…」
「母さん、全部聞こえてんだよ」
何故か不機嫌な工藤く…王子様まで登場です。
「なまえ姫、俺と一曲踊っていただけますか?」
「はい。喜んで」
頬を染めたシンデレラの笑顔とそんなシンデレラを優しい笑顔で見つめて微笑んでいる王子が踊った後には自然と拍手が二人を包み込みました。
その後、国王とも一曲踊ったシンデレラは何処のご令嬢だろうと会場中の注目の的でした。
その容姿も含めて会場中の視線を集めてばかりのシンデレラでしたが、国王一家と記念撮影した後、忽然と姿を消してしまったのです。
「ねぇ、ちょっと待って。貴方は誰なの?」
シンデレラの腕を引っ張り連れ出した張本人の姿が雲の隙間から覗いた月明かりに照らされました。
そうです。シンデレラに魔法をかけたあの魔法使いです。
その時、遠くで12時を告げる鐘の音が響き渡りました。
「あのままあそこに居たら危なかったな。まぁ、国王一家が離してくれねーんじゃ仕方ねーけど」
「だから助けてくれたの?」
「助けてねーぜ?硝子の靴はちゃんと置いてきたしな。オメーにしか合わねぇ特注品を」
そして、シンデレラを家まで連れて帰ると、また会おうぜと言い残し、魔法使いは煙と共に姿を消してしまいました。
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