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 オマケ

■オマケ

一日中、キッドと一緒にいたシンデレラは、キッドの手によってお城へと帰りました。


「名探偵と鉢合わせして八つ当たりされちゃ堪んねーからな。俺はここで帰るわ」


楽しかった気分を壊されたくないと、キッドは無情にも不機嫌全開の王子の相手をシンデレラに委ねました。


「ただいま戻りました」

「なまえちゃん、おかえりなさい!」


我先にと抱きついてきたのはお妃様です。


「なまえ君が我々の娘になることが正式に決まったんだ。また盛大に御祝いするとしよう」


王様も混じってお妃様とシンデレラを取り合いです。

すると、そこに地獄から這い上がって来たかのような不機嫌度数をMAXから軽く振り切った王子様がやって来てシンデレラを王様とお妃様の手から奪いました。


「なまえ、ちょっと俺の部屋に来い」


シンデレラに有無を言わせず、王子様は横暴にもシンデレラを力ずくで引っ張って行きました。


「今日からなまえ君はこの城で暮らすと言うのに…全くせっかちなヤツだ」

「今日一日なまえちゃんを持って行かれたのが悔し くて仕方ないのよ」

「しかし、なまえ君がこの城に帰って来てくれたと言うことは、新一のプロポーズを受けたということだろう?」

「そうよね。それなのに新ちゃんたら…もしかして新ちゃん、プロポーズした自覚がないんじゃないかしら?」

「あいつならあり得るな」


今日の出来事を知っていながら、全く意に返さない呑気な王様とお妃様です。
それどころか、自分たちの息子をネタに楽しそうに笑っています。


その頃、和やかムードな王様たちとは正反対な王子様とその王子様にぐいぐい引っ張られていたシンデレラは王子様の部屋に到着したところでした。

これでやっと落ち着くことが出来る。
そう思っていたシンデレラですが、安心するのはまだ早かったのです。


「今日一日何処に行ってたんだよ?」

「え?んーと…色々?」

「それで俺が納得するとでも思ってんのか!?」


壁に拳を勢いよく叩きつけられ、それが顔スレスレだった為にシンデレラは目を固く閉じて顔を伏せました。


「今日はお礼する約束してたから…」

「何だって?」


シンデレラが細く消えそうな声で呟いたので、当の王子様には聞こえてなかった模様です。


「だから!今日は舞踏会の時にドレスアップしてもらったお礼に付き合ってたの!」


魔法使いがキッドと同一人物と言うのはタブーですが、まさか魔法使いの誕生日祝いに一日付き合ってたとは言えるはずもなく、その最大級の禁忌を逃れる為にシンデレラは魔法使いの話を出しました。

しかし、これが間違いだったのです。


「っかしーな。魔法使いは母さんの知り合いが演ってた筈なんだけど…」


シンデレラはドキリとしました。
誕生日からキッドの素性がバレないようにしたつもりが、誰がキッドなのかモロバレの危険が出てきました。

内心メチャクチャ焦ってるシンデレラが話をすり替えようとした、まさにその時、部屋のカーテンが風で大きく靡きました。
カーテンの向こうにはシルクハットにマントの先ほどまでシンデレラと一緒にいた怪盗のシルエットが浮かび上がっています。


「テメー、何しに来やがった!?」


王子がシンデレラを庇うように前に出ました。


「予告状…というより王子にご忠告をしに参りました」

「忠告…?」


カーテンの向こうから此方へと歩いてきた怪盗キッドは王子とある程度距離のある位置で立ち止まりました。


「なまえ嬢は嘘をついていません。私が変装の名人であることをお忘れですか?名探偵?」

「!?」


どうやらキッドはシンデレラを庇う為に危険を侵してまで出てきた模様です。


「そして王子に忠告です。なまえ嬢を泣かすようなことがあれば、私は何時でもなまえ嬢を拐いに参ります」

「誰がテメーなんかになまえを渡すかよ!」

「しかし、なまえ嬢は今にも泣きそうな表情をなさってますが?」

「え?」


キッドの勝ち誇ったような表情に、後ろを振り向けば、シンデレラが瞳に涙を溜めて王子の服を遠慮がちに掴んでいました。


「今日のところはなまえ嬢に一日付き合っていただいたので引き下がりますが、次はありませんよ?名探偵?」


キッドはそれだけ言うと夜の闇に消えてしまいました。
王子としては、今すぐキッドを追いたいのは山々ですが、今にも泣き出しそうなシンデレラを置いていくなんて問題外です。


「どうした?なまえ」

「新一、まだ怒ってる?」


服の裾をちょこんと掴まれて、瞳に溢れそうな程涙を溜めて上目遣いに不安そうな顔をされては、王子も降参する他ありません。

(それは反則だろ…)

内心天を仰いだ王子ですが、優しく微笑むと


「もう怒ってねーよ」


とシンデレラの頭を撫でて優しく抱き締めました。
シンデレラが王子の胸に頭を預けて

(良かった。快斗から話が逸れて)

と内心ホッとしてることにも気付かずに。



同時刻、問題の白き罪人は大きな木の枝に体を預けて月を眺めていました。


「可愛いねぇ。俺のことを誤魔化す為にあんな演技までしてくれちゃって」


どうやらシンデレラの演技はキッドには通じなかった様です。


「さて、どうやって俺のもんにするかな?囚われのお姫様を」


不敵な笑みを残して、白き罪人は闇に溶けて姿が見えなくなりました。

後日、王子とシンデレラの婚約パーティーが派手に行われたのも、その途中でキッドがシンデレラを拐ったのもまた別の話です。



おしまい




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