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 全身で、

『ねぇ、青子ちゃん。料理このくらいで足りるかな?』
「多すぎるくらいだよ!でも、なまえちゃんのお料理、どれも美味しそうだから瞬殺で取り合いになってなくなっちゃうかも!」
『そう?足りなくなったらパーティが台無しだから、もう少し作ろうかな。まだパーティまで時間あるし、材料も残ってるしさ』


今日はバ快斗の誕生日。
毎年みんなでパーティはしてたんだけど、今年は特別ゲストでなまえちゃんを呼んで、お料理やケーキを作ってもらえないかって青子がお願いしたんだよね。
だって、快斗は中1の頃からなまえちゃん一筋なのを知ってるから。
バカばっかやって授業妨害するのが当たり前だったあのバ快斗が、サボることはあっても授業妨害をしなくなったのが突然過ぎて、青子も先生たちも皆して気味悪がってたのを今でも覚えてる。
そのきっかけがなまえちゃんに一目惚れしたからだって聞いたのはいつだったかな?

恋愛ってスゴイ!片想いでもこんなに性格変わっちゃうんだ!ってその時は思ってたけど、なまえちゃんに彼氏がいるのは快斗だけじゃなくて、青子も知ってる。
それでも、快斗はなまえちゃんを諦めるつもりがないって、それどころか時間が経つにつれ、どんどん真剣になまえちゃんに惚れ込んでいってるのも青子は幼馴染みとして一番近くで見てきた。
出会った頃から大人っぽかったなまえちゃんに追いつこうとしてるみたいに頑張ってた快斗の努力も知ってるから、これが一番のプレゼントかなって。


♪〜♪〜


「快斗?どうしたの?」
「やっぱ今年もオメーん家のパーティ行かなくちゃいけねーのか?俺、もう17だぜ?正直めんどくせーんだけど」


なまえちゃんが料理を仕上げてるキッチンから抜け出して、電話に出たらそんな下らない内容だった。
この後、面白いくらい快斗の態度が一変するんだろうなと思うと、どうしてもニヤけてきちゃう。


「あれー?快斗はあたしからの誕生日プレゼント要らないんだ?」
「別に青子からのプレゼントなんか何の期待もしてねーからいいんだよ」
「残念だなー。今年の青子からのプレゼントは特別だったのになー」


青子の楽しそうな声に思わず眉間に皺が寄った。
俺はもう誕生日パーティでバカ騒ぎすんのが疲れっから、断りの電話入れてんだろーが。
連絡も無しにサボったりしたら、オメーがウルセーから。


「特別?なんだよ?」
「主役の快斗が要らないんなら仕方ないよね。じゃあ、みんなで食べちゃおうかなー?なまえちゃんの豪華な手料理の数々と、快斗へのバースデーチョコケーキ。もちろんケーキもなまえちゃんの手作りなんだけどね?そっかー。快斗は要らないのかー。もったいないなー。美味しそうだったのにー」
「はぁ!?ちょっと待て!どういうことだよ!?なまえを餌に俺を釣ろうってのかよ!?オメー、ふざけんなよ!!?」


言ってもいい冗談と、悪い冗談ってのがある。
俺の誕生パーティっていや、昔から俺や青子とつるんでるメンバーで毎年やってんだ。
そこに何の接点もねーなまえが加わるわけが


『もしもし?快斗?』
「なまえ!?なんでオメーが青子の電話に出るんだよ!?」
『え?今、青子ちゃんの家で快斗の誕生日パーティの料理の準備してるからだけど…青子ちゃんから聞いてないの?』


不思議そうな声を出すなまえに、俺は何の言葉も返せなかった。

は?マジで?
俺の誕生パーティの料理がなまえの手作り?
都合のいい夢じゃなくて?
いや、この際夢でもいいから今は醒めんな!!


「なまえ、一つだけ聞かせてくれ!」
『なぁに?そんな真剣な声出して』
「ケーキもオメーが作ったって本当か?」
『え?うん。青子ちゃんにケーキと料理作って欲しいって言われたから。料理も粗方出来たけど、足りなくなったら困るから追加作ってる最中なの。ケーキなら冷凍庫で冷やしてるわよ?』
「冷凍庫?冷蔵庫じゃなくて?」
『快斗、アイス好きでしょ?だから、アイスケーキ作ったのよ』


自分の頬をおもいっきし抓ってみたんだけど、涙が出てくる程痛ぇってことはこれは現実らしい。
いや、アイスケーキが手作りなら、それは間違いなくなまえの手作りだ。
誰にでも作れるもんじゃねーだろうし、それに「俺の為に」なまえがチョイスしたんなら、不思議でも何でもない。


「青子がバ快斗の為にわざわざなまえちゃんにお願いしたんだけど、誕生日プレゼントがこれじゃあ気に入らない?」
「バーロー!パーティ始まる時間まで待ってられっかよ!なまえがいんなら、今すぐオメーん家行く!!」
「え?ちょっ」


青子がなんか言ってた気がすっけど、なまえがすぐ傍にいんのに黙って待ってられっかよ!

なまえの手料理が食える。
それは魅力的だ。間違いない。
なまえの手作りのケーキが食える。
これも待ちきれねー!しかもなまえの手作りアイスケーキとか初めて!!
これで喜ばねーバカはいねーだろう。
でも、それより、何より


「なまえ!」
「バ快斗!チャイムくらい鳴らしなさいよね!?ってか、玄関の鍵掛けてたのに、どうやって入ってきたのよ!!?」
「んなまどろっこしいマネしてる暇ねーんだよ!!」
「そもそも快斗は皆より早く集合かけてたんだから、何も今来なくても時間通りに来れば、」


青子といつも通り(いや、俺が熱くなってる分いつもより賑やかだったかもしんねーけど)言い争いしてる間も俺は迷わずなまえの元へと向かっていた。


『あれ?快斗、もう来たの?まだ早くない?』


テーブルに料理を並べてるエプロン姿のなまえを見つけた瞬間マジメに目眩がした。
なんだ?この豪華な料理のオンパレード!
これ、全部俺の誕生パーティの為だけになまえが作ってくれたのかよ!?
だったら、種類なんてこの際問題じゃねー。
ぜってー全種類食べてやる!!


「なまえちゃん!聞いてよ!バ快斗ったらなまえちゃんが青子の家にいるって知った途端、」


興奮気味に青子がなまえに文句言ってたけど、なまえはいつもより柔らかく優しい笑顔で青子の愚痴を聞きながら青子の頭を撫でて落ち着かせていた。
むしろ、興奮して落ち着かねーのは俺の方なんだっつーの!!


「なまえ!ケーキ!ケーキ出してくれよ!!それで完成だろ!?」
『え?でも、パーティまでまだ時間あるんじゃ』
「そんなことどーでもいいから俺のケーキplease!!」
『まぁ、今日は快斗が主役だしね』


そう言ってキッチンへと消えたなまえに電話をもらってから暴走し始めた心臓が、期待で更に加速した。
なまえが俺の誕生日を手料理で祝ってくれる。
これが夢じゃなくて現実だって?
興奮しねー方がおかしいだろうが!!


『はい。快斗、17歳の誕生日おめでとう。新しく刻む快斗の時間に幸せが溢れていますように』


俺の大好きななまえの笑顔の中でも間違いなく極上の部類に入るであろう笑顔で、ケーキをテーブルの中央に置いてくれたなまえに歓喜で涙まで出そうになった。
幸せで胸がいっぱいになるってきっとこういうことを言うんだろうと思う。
うまく呼吸が出来てるのかさえ怪しいくれーに嬉しさで胸が震えてた。

手作りの料理もケーキも勿論嬉しい。
けど、メールじゃなく、電話越しじゃなく、目の前で生のなまえに誕生日を祝ってもらえたことが何よりの最高のプレゼントだった。



全身全霊で、

この世に生を受けたこの日に感謝した!


「なぁ、料理はみんなが揃うまで我慢すっからさ。ケーキだけ今食っちゃダメか?」
『それならケーキもパーティが始まるまで我慢してよ』
「無理!チョココーティングされた中身が気になる!」
『だから、パーティ始まってからでいいでしょ?』
「じゃあ、代わりに誕生日プレゼントくれよ!」
『は?料理とケーキ準備したでしょ?快斗に誕生日祝いの言葉も言ったんだから、あたしはもう帰るわよ?』
「なまえの料理とケーキは青子からの今年の誕プレなんだよ!」
『そんなこと言われても何も準備してないし…』
「だいじょーぶ!物なんかいらねーから!!」
『え?』


状況が飲み込めてねーなまえを俺はギュウっと強く抱きしめた。
俺、幸せ過ぎて今なら死んでもいい!
(いや、なまえの手料理とケーキは食うけど!!)


『青子ちゃん、快斗この家から追い出してもいい?』
「任せて!青子も手伝う!!」
「追い出されなくても一回出るって!なまえもう帰んだろ?俺が駅まで送ってやるよ」
『一人で帰れるからいいわよ』
「ダーメ!誕プレに駅までプチデートすんの!」
『…快斗、まさか誕プレって言えば何でも許されると思ってないわよね?』


なまえを駅まで送った後、俺の誕生パーティが始まったけど、他の奴らに手を出される前に、真っ先に俺がなまえの手料理を全種類確保したのは言うまでもない。


そんな俺の人生史上最高に幸せだった17歳のbirthday!!


end.


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