×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
 出逢った瞬間、

帝丹中の文化祭でなまえが演じたジュリエットを見て、俺は改めて思っていた。
やっぱ俺、あいつの歌声好きだわ。

でも、それ以上に恋したロミオに全てを捧げるようななまえのジュリエットを見て、俺にもそんな風に恋して欲しくなった。
最後になまえを抱きしめて、キスシーンまで演じたロミオが羨ましくて、嫉妬までしてた。
こんなラストがあんなら、俺がロミオ演りたかった!!!
なんだって、俺は帝丹生じゃねーんだよ!?

なまえの歌声が聞きたくてあの河原に通っていても、そう簡単になまえと出会えるわけじゃねー。
せめて、あいつの連絡先だけでも分かってりゃ…そう思いながら、なまえと出会ってから頻繁に通いつめてる奥野の家でダベってたら、飲み物が切れた。


「俺、ちょっと買いに行ってくるわ。なんか甘いもんも食いてーし」
「でも、俺ん家からじゃスーパーもコンビニも遠いぜ?」
「場所だけ教えてくれりゃ構わねーって」


で、教えてもらった一番近いらしいスーパーまではかなりの距離があった。
ったく、なんだってこのご時世に近くにコンビニの一つもねーんだよ。
なんて愚痴ってられたのも、スーパーに着くまでだった。

初めて入ったスーパーで、しくった、飲みもんやら菓子類は反対側だったかと舌打ちした時、最近恋しくて仕方なかった声が聞こえてきた。


『えーっと…後は林檎だけ、かな?』
「なまえ?」


手にしてる買い物カゴを覗き込みながら呟いてるなまえを見つけた時には、俺が会いた過ぎて幻覚でも見てんのかと思ったけど、俺の声にキョロキョロと辺りを見渡したなまえに本物だって分かるとそのままなまえに駆け寄った。

こんな偶然ってあるんだな!
もう、ここまで来たら運命じゃねーの!?
奥野ん家の近くにスーパーやコンビニがなくて助かった!!


『今度お菓子作るから、その買い出しに来たの』
「菓子!?」


なんつー絶妙なタイミング!
俺も菓子食いたくなってここまで買いに来たんだけど、なまえの手作り菓子の方が断然食いてーに決まってんじゃねーか!!
そりゃあもう、金払ってでも食いたい!!!


「なぁなぁ、俺にも作ってくれよ!」
『んー…簡単なのでもいい?』
「マジで!?作ってくれんの!?やったね!」


帝丹生なら食えたのにってやんわり断ってきたなまえに、粘るに粘っていたら作ってくれるって言ってくれた!
つーか、帝丹生だったらなまえの手作り菓子まで食えんのかよ!?
ずりー!何、そのオイシイ特典!!
俺、今すぐにでも帝丹に転入してーんだけど!!!


『後は焼き上がるのを待つだけだよ』
「スゲーっ!なんかあっという間だった!!」


菓子作ってるなまえの手は、まるで魔法が使えるみてーだった。
俺と話しながらでも、手は止まることなく動き続けて、オーブンが温まる頃には焼くだけにまで仕上がってしまった。
なまえの歌声だけでも、人を惹きつける魔法がかかってんのに、なまえの魔法は歌声だけに限らないらしい。


『黒羽くんだって魔法が使えるでしょ?』
「え?」
『見てる人を飽きさせずに楽しませるマジックが出来るのは、立派な魔法だと思うけど?』


なまえが淹れてくれた紅茶を飲みながら、ケーキが焼き上がるのをそわそわしながら待ってっと、不意にそんなことを言われた。
あれ?俺、なまえにマジックの話なんかしたことあったか?
だって、こいつは俺が自己紹介してる時にバラを出したのさえ見てなくて、文化祭ん時に花束出したくれーで…


「俺のマジック、オメー文化祭の時しか見てねーよな?」
『うん。残念ながらまだあの一回しか見てないね』
「なんか、俺のマジックショーでも見たことあるような言い方だった気がすんのは俺の気のせいか?」
『さぁ?黒羽くんの気のせいなんじゃない?』


悪戯に煌めいたなまえの瞳に思わず心臓が跳ね上がった。
花束を出したあの時みてーに、オメーが喜んでくれんなら、俺は何度だってなまえの為だけにマジックショーをしてやるよ。
それを言葉にする前に、オーブンが鳴ったから俺は迷わずオーブンを開けに行った。
俺の為だけに作ってくれた初めてのなまえの手作りは、優しくて体中に幸せが広がるような味がした。



偶然に君と出逢った瞬間

これはもう運命だと感じた。


「黒羽!お前どこまで飲みもん買いに行ってたんだよ!?…ってか、お前何持ってんだ?」
「俺のお姫様の手作り菓子!オメーが教えてくれたスーパーでたまたまなまえに会ったから、ねだって作ってもらったんだけど、残り土産にってくれたんだよ!!」
「…お前、本当になまえちゃんが絡むと俺の存在忘れんだな」
「しかも!なまえのアドレスまでゲット出来たんだぜ?今日だけでこの進歩って凄くね!!?」
「(俺の話聞いちゃいねぇし)黒羽の頭ん中、清々しいまでになまえちゃん一色だな」
「おう!なまえがいれば俺他に何にもいらねー!!」
「なんでそこだけ聞こえてんだよ!!」


さて、次のステップ行きますか!



(早く君に近づきたい)


.

[ prev / next ]
戻る