11.試合終了
最近晴れてばかりで、そろそろ梅雨も開けそうな夜。
あたしは生地を混ぜながら、イヤホンをつけて園子と電話をしていた。
『でさ、もうだいぶ暑くなってきたじゃない?夏の間は差し入れしても傷んじゃうと思うから、テスト週間前の最後の練習日の明日に差し入れしようと思うんだよね』
「あんたって本当マメよねぇ。で、今度は何を作ってるの?」
『マフィンだよ?これなら一個ずつ包めるから朝練終わりにでも配ってもらえるかなぁって思ってさ』
「あんたのチョイスにしては珍しくない?いっつも手の込んだの作ってるじゃない」
『うん。だから今回は好きなの選んでもらえるように種類を増やしたの。ブルーベリーとバナナとアップリコットとチョコレート』
「…なまえ、」
『クスクス。分かってるって。園子は全種類食べてくれるんでしょ?』
「うん。分かってるならよろしい!それで?明日も朝なまえの家に行けばいいのよね?」
『毎回ごめんね?』
あれから何度か差し入れをしたんだけど、毎回工藤くんを通して感想をくれるという嬉しいことをしてくれるサッカー部の皆さん。
もちろんあたしは園子から聞いてるんだけど。
涼しくなるまでは差し入れ出来なくなるから、今回は部員全員に渡るように多めに焼いていた。
チンと軽い音を立てたオーブンを開けてみると、甘い香りが広がった。
『うん、これも色が綺麗!』
もう3種類焼き終わったので、最後のチョコレートをオーブンに入れて、焼き終わったアプリコットはテーブルに持っていく。
テーブルの上は焼き上がって冷ましているマフィンがズラリと並んでいた。
後は、片付けをして、明日の朝冷めたマフィンを包んだら終わりだな、と今まで使っていた機材を流しに持って行った。
『今回も喜んでもらえるかな?』
明日のサッカー部の人たちの反応が楽しみで、歌を口ずさみながら後片付けを始めた。
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