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「新一くーん!」


朝練をしてるとグラウンドの入り口に立っていた園子が俺を呼んだ。あいつ、朝っぱらから元気だよなぁ。


「園子。今日はえらく早ぇんだな」

「お使い頼まれたからね。はい、これ」

「あー、また差し入れか?」

「何よ?嬉しくないっての?」

「いや、違ぇけど。また取り合いが始まんのかと思ってな」


そう、最初のレモンパイから始まり、毎回差し入れをもらう度に誰が食うかで揉めるから面倒なんだよ。


「暑くなったら差し入れしても傷んじゃうだろうからって、とりあえず最後だからみんなに渡るように多めに作ったって言ってたわよ?」

「そうなのか?」

「うん。今回はマフィンなんだけど、4種類あるから好きなの選んでくれってさ」

「そいつホントに菓子作るの好きなんだな」

「サッカー部は毎回感想くれるから嬉しいんだって。ってことで、またこれ配っといてよね」

「なぁ、そろそろ誰なのか教えろよ。他の奴らも直接お礼が言いてぇっつってるし」

「自分で探せば?あんた探偵なんでしょ?」

「オメーまでそんなこと言うのかよ」


思わず苦笑いが漏れたが、仕方ないだろ?


結局俺は、親父のファンだと差し入れをしてくれてるヤツも、こうして部活に差し入れしてくれてるヤツも分からないままでいる。

どいつもこいつも自分で探せっつーけど、んな簡単に見つかるもんなのかよ?

楽しそうな面してんのが、俺で遊んでるってことだけ分かって余計に腹が立つ。


「おい、工藤!お前いつまでサボってる気だ!」

「やべっ。今戻ります!んじゃ、サンキュな」


ニヤニヤしてる園子に一応礼を言って、マネージャーに菓子の入った袋を預けて朝練に戻った。


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