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30.文化祭本番


目を開けたらそこにいるのはあたしじゃなくてジュリエットだ。

なんて、ありきたりな暗示をかけてみるけど、かかるはずもなくて。
目を開けるとジュリエット仕様に変更されたあたしが鏡の中にいた。


「うん。どこから見てもなまえちゃんお嬢様だね!」

『望月さん、ありがとうございます』

「泣いても崩れない様にしてるから、ラストも心配しなくて大丈夫だよ」


望月さんにメイクしてもらってる間も周りでは裏方さんたちがバタバタと賑やかに準備してる。
あたしたちの出番はお昼からなのに、一体今から何を準備してるんだろう?


「じゃあ、俺は有希ちゃんたちと客席で劇を見ることになってるから。頑張ってね」

『はい!ありがとうございました』

「ほら、そんなに頭振っちゃったらセットが乱れるって前にも言っただろ?」

『あ。すみません…』

「じゃあ、また後でね!」


颯爽と準備室から消えた望月さん。
だけど、あたしは出番までどうしたらいいわけ?


「なまえ、すっごくキレイ!」

『蘭もスゴく可愛いよ。これはロミオが片思いしちゃうわけだ』

「もう辞めてよ!」


蘭は普段から可愛いけど、ドレスに着替えた蘭はそれにも増して可愛い。
どれくらいかって工藤くんにあげるのが惜しいくらい。

別にそういう趣味があるわけじゃないけど、可愛いコは観賞してて飽きないじゃない?


「お。みょうじも準備出来たのか。俺たちは校内でビラ配りだってさ」


は?この格好でうろつけと?
園子のヤツ、あたしを何度晒し者にしたら気が済むんだ。


『じゃあ、蘭一緒に行こう?』

「え?なまえは新一とビラ配りだよ?」

『え?』


唯一のあたしの癒しと一緒じゃないだって?そんなバカな!


「んだよ。俺とはイヤだっつーのかよ」

『誰もそんなこと言ってないでしょ!』

「仕方ないよ、なまえ。園子が男女でペア組んでビラ配れって言っちゃったんだもん」


またしても園子か!
こうなったら文化祭終わったら園子に何か奢ってもらうんだから!


「ほら、これノルマ分のチラシな」

『こんなにあるの!?』


両腕にずっしりとくるこの重みはとてもじゃないけど時間までに配れる気がしない。
園子のヤツ、どんだけ無茶振りしたら気が済むんだ…。


「俺らが行くのは正面玄関だから、このくれーすぐに無くなるだろうっつってたぜ?」


いやいやいや。
いくら人の出入りが多くても限度っていうものがね?
…ん?正面玄関?


『ヤだ!あたし行かない!!』

「ワガママ言ってんじゃねぇよ。ほら、行くぜ」

『イヤーっ!!!』


なんで晒し者のグレード上げる必要があるのよ!?
この格好でチラシ配りってだけで十分じゃない!
あたし劇始まる前から泣きそうなんですけど!?

嫌がるあたしを工藤くんはぐいぐい引っ張って問答無用で正面玄関まで連れて行った。



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