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『13時から講堂にて一年生の劇「ロミオとジュリエット」をやりまーす!皆様、是非ご覧下さい!』

「散々嫌がってた割りには積極的だな?」

『諦めただけよ』


人生諦めが肝心だ。
どんだけイヤだと喚いたってやらなきゃいけないことは変わらないんだし。
それなら面倒なことはさっさと終わらせるに限る。


「工藤くん!絶対見に行くからね!」

「ありがとうございます」


出た。工藤くんの営業スマイル。
サッカーしてる時の様なキラキラ感はないけど、一体この笑顔で何人の女生徒が引っかかったことか。


「あれ?工藤となまえちゃんじゃん!」

「げっ」


うん。工藤くんのうめき声も納得だよ。
何故にサッカー部の先輩方はそんなに固まって行動されているんですか。
確かこの人たちは2年生、だったよね?


「へぇー。ロミオとジュリエットってその衣装でやんのか。何か本格的じゃねー?」

「こんなとこで何してんだ?」

「あー、ビラ配り!俺らも一年の時やったやった!」


一度に全員が喋り出すから、何を言ってるのか全然聞き取れない。
曖昧に笑って工藤くんを見ると困った!って顔してるから状況は一緒なんだろう。


「ねぇ、あの人だかり何かな?」

「行ってみっか!」


人が集まる所には更に人が集まるっていうのが人間の不可思議な行動で。
サッカー部の先輩方10名程があたしたちを囲んだのをきっかけに人だかりが出来た。


「皆様!本日13時より、ここにいるサッカー部の期待の新人、工藤新一がロミオをするロミオとジュリエットが講堂で開演します!」

「なまえちゃん、チラシ貸して!こちらにいる麗しのお嬢様がジュリエット嬢です!」


何だかよく分かんないけど、先輩方はあたしたちの変わりにロミジュリの宣伝をしてくれてるようだ。
先輩に紹介されたので、にっこりと微笑んで一礼をした。


「ハッピーエンドになるロミオとジュリエットとは一体どんな感じなのか!?見逃せません!!」

「おい、工藤!何かやれって!」

「は?先輩、何言って」

「「「工藤!」」」

「〜〜っ!あぁ、愛しのジュリエット。キミの愛が私のモノになるのならば、私は他に何も要らない」


ヤケになった工藤くんが真っ赤になってあたしに愛を囁いて指先に口付けをしたので、あたしも調子に乗ってみた。


『あぁ、ロミオ様。私の愛は既に貴方のモノです。この海より深い愛をどうやって貴方に渡したらいいのか分かりません』

「続きは13時!13時に講堂にて開演です!!」


寸劇に拍手をくれた立ち止まってる人たち一人一人に先輩たちが分担してチラシを手渡している。
何とも手慣れたもんだと感心した。

ビラ配りにこんなズルをしてもいいのかな?とも思うけど、自分の仕事が減るのはいいことだ。
うん、今日のお礼に今度またサッカー部に差し入れを持って行こう。

隣でまだ赤い顔のまま頭をぐしゃぐしゃと掻いている工藤くんをムシして、あたしもニコニコと営業スマイルを向けてみた。



(持つべきは頼れる先輩ですね!)


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