×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



25.魔法の後の時間


工藤邸の大きなバスタブに体を沈めて足を伸ばす。

何だか今日一日だけで色々あり過ぎた気がするのはあたしの気のせいかな?

きっとあれだ。
お姫様セットが原因だ。
普段は撮らない写真をあんなに撮ったんだから、精神的に疲れてても仕方ない。

トリートメントを髪に馴染ませたまま、ホットタオルを巻いて、バスタブでゆったりしてるこの時間が日常だ。
いや、あたしの家の浴槽はこんなに広くないんだけど。


というか、今日お風呂に入ってビックリしたこと。
あたしが普段使ってるシャンプーやトリートメントが当たり前の様に置いてあった。

あれか?前回望月さんにこのシャンプーありませんか?って聞いたのがいけなかったのか?

なんかだんだんとこの工藤邸とあたしの家の違いがなくなっていってるような気がする。
…いや、きっと有希子さんの狙いはソレなんだろうけど。


はぁ。とまた大きく息を吐いて肩までお湯に浸かる。
きっとあんなドレスを着ることなんて二度とないだろうから、今日は貴重な体験を勉強させてもらったと思うことにしよう。

メイクを落とした後の肌に汗が滲んできたので、思考を止めて、トリートメントを流すべくバスタブから上がった。


『長湯してしまってすみません。今上がりました』

「気にしなくていいのよ。女のコのお風呂は長いものなんだから」


なんてウィンク付きで有希子さんは返してくれた。
本当に何やっても様になる美人だよなぁ。


「でも、もう少しなまえちゃんのお姫様姿見ていたかったわ〜」

『あはは…あたしは有希子さんと違ってドレスそんなに似合いませんよ?望月さんのところでも写真撮っていただいたので、後は写真でどうぞ』


うっとりとした表情でそんなことを言う有希子さんに空笑いしか出ない。

綺麗にしてもらえたのは嬉しいですけど、あれはあれで身のこなしとかイチイチ気を使うんですよ?
あたしは有希子さんみたいに体に染み付いてるわけじゃないんですから。


「それじゃあ、今日はゆっくりお部屋で休んでね」

『結局お泊まりすることになってしまってすみません』


ドレスから着替えるに当たって、ドレスの手入れ方法なんて知るわけもないあたしは結局有希子さんに甘えてしまったのだ。
今日だけは、お誘いを断るわけにもいかなかった。


「何言ってるの!なまえちゃんのおかげであの優作が締め切り前の原稿全部終わらせたんだから、このくらいは当然よ!」


…先生、普段どれだけ編集者の方々をお待たせさせてるんですか?
先生の普段の執筆状況を不安に思いつつも、あたしも髪を乾かす為に部屋へと戻ることにした。


- 180/327 -
prev next

戻る
[ +Bookmark ]