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(番外編)新一side


この前、4人で食事をした時、誰に言ったわけでもねぇけど、確かに俺は誓ったんだ。


次はどんな格好してても、オメーだって見つけてやっから


って。
なのに何だ?コレ。
これじゃあ丸っきりあの時とおんなじじゃねーかよっ!!



母さんの付き合いで下らねぇ劇に付き合わされて、今日父さんは外で食べてくるからって俺たちも外で飯食って、家に帰って来たら何故かカメラさんが来た。


「母さん、アレ何だよ?」
「優ちゃんがお客様連れて来るのよ!」


どこか上機嫌な母さんに、そんなに嬉しい客なのかよ?って思ったけど、俺はもう着替えてもいいだろうと二階へ上がろうとしたら母さんに止められた。
ったく、何なんだよ。こんなカタっ苦しい服なんかさっさと脱ぎてーってのに。


「ただいま」
『お邪魔します』


ちょうどいいタイミングで父さんが帰って来た。
これで父さんの客に挨拶をしたら俺もお役ごめんだろと思ってたら、高校生くらいのすっげー美人を連れて来てた。

ドレスもすげぇけど、それを着こなしてる本人がすげぇ。

母さんの友人だって現役の女優やモデルにも会ったことはあっけど、こんな風に衝撃を受ける程の美人なんか見たことなかったから、驚きで固まってしまった。


「キャー!!なまえちゃん、かーわーいーいーっ!!!」
『有、希子、さん、苦し、』


…は?
母さん何言って…
ってか何してんだよっ!
んなみょうじにやるようなことしやがって、その人に失礼だろーがっ!!


「なまえちゃんお姫様じゃないっ!ね、新ちゃん?」
「……」


……は?
えっ?もしかして、ホントにみょうじ…なの、か?
嘘だろっ!?
どう見たって俺より年上じゃねーかっ!!


「さぁ、カメラさんも来てるから4人で記念撮影しましょうねっ!!」


ってみょうじが来て更にテンションが跳ね上がった母さんが言い出した。

は?4人で記念撮影?
っつーか何の記念だよっ!!


「んだよ、ソレ!聞いてねぇぞ!!」
「さぁ、新一。カメラさんも待たせていることだし、早く行こうか」


俺の肩を持って、すたすたと歩く父さんに押されて、仕方なく歩かされてる中、父さんに気になってたことを聞いてみた。


「なぁ、父さん。あれがみょうじだって分かってたのか?」
「何を言い出すかと思えば。当たり前だろう?有希子だってちゃんと分かったじゃないか」
「……」


やっぱり分かんなかったのは俺だけだったのかよっ!!


「新一、なまえ君はこれからどんどん綺麗になっていくぞ。それこそお前が分からなくなるかもしれないくらいにな」
「……」


今でも俺はみょうじを見つけられねぇってのに、これ以上キレーになってく、だって?
そんなの、俺どーすりゃいいんだよ!?

母さんに連れられて部屋まで来たみょうじを見ながら、悔しさで気が狂いそうになった。
次はぜってぇに見つけてみせるっつったのに、またオメーは俺の予想外の姿で現れては俺を置いていくんだ。


「坊っちゃまもお嬢様の肩に手を乗せる感じでお願い致します」


目の前にいるみょうじの肩に手を乗せるだけ。
ただそれだけの行動が、なかなか出来ない。
鍛えてる蘭と違って、細くて華奢なこの肩は俺の手を置いたら壊れちまうんじゃねぇか?

震える手で、出来るだけそっとみょうじの肩に手を乗せる。
こんだけ近くにいんのに、俺とみょうじの距離はどうしようもなく離れてる気がしてならねぇ。
父さんも母さんもみょうじのすぐ近くにいんのに、俺だけが置いていかれてる気がする。
楽しそうに笑ってる父さんと母さんを見て、何だか笑えてねぇ俺だけが別の場所にいる気がした。


「お嬢様もぼっちゃまもにこやかにお願い致します」


前に座ってるみょうじの顔は見えねぇけど、この状況で笑えてねぇのが俺だけじゃねぇってだけで、ひどく安心した。

大丈夫だ。みょうじはまだ俺の手の届く所にいる。
父さんたちの位置までは行けなくても、まだ俺の知ってるみょうじな筈だ。

どうせ今夜も泊まってくんだろうし、この後話しかけてみっかな。
そう考えたら、やっと余裕が出来たのか、身体から余計な力が抜けて笑うことが出来た。





部屋に響いたシャッターの音が俺の知らないみょうじの時間を終わらせてくれるみてぇで、心地よく感じた。


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