23.涙の理由
もう少しゆっくりしていけばいいのにっていう工藤夫妻のお誘いを断って、のんびりと一人になりたかったあたしは、うだるような暑さの中、自分の家へと帰った。
ダメだ。昨日から全然頭が働いていないような気がする。
部屋のエアコンのスイッチを入れて、ベッドにゴロンと転がると枕元に投げ捨てていた携帯が着信を知らせた。
『もしもし?』
「あ、なまえ?今日ヒマ?」
『うん。ヒマだけど…急にどうしたの?蘭、部活は?』
「今は休憩時間なの!それでさ、なまえと久しぶりに会いたいんだけど、部活が終わった後に会えないかな?」
ダメ?なんて可愛くお願いされてしまっては断るわけにもいかない。
第一断る理由もないし。
部活の終了時間を聞いて、校門で落ち合うことにした。
とりあえずまだぼんやりしてる頭を覚ます為に、冷ためのシャワーを浴びる。
夢のことを引きずるなんてあたしらしくない。
こっちに来てから、こんなこと一度もなかったっていうのに、本当にどうしてしまったんだろう。
考え事をしながらシャワーを浴びていたら、体がすっかり冷えきってしまったので、最後に熱いお湯を浴びてから上がることにした。
髪を乾かして、出かける為の服を用意すると、未だに呆けている頭を無理矢理働かせる為に小説を開いた。
けど、いつもみたいに小説の世界に没頭するどころか、文章がまともに頭に入ってこない。
ダメだ。これはかなり重症だな、と苦笑いが漏れる。
そういえば、昨日のことをまだ工藤くんに謝っていなかったのを思い出して、携帯を開いて、昨日はごめんなさいとメールを打った。
説明も何もなしに彼が納得するとは到底思えないけど、他にどう打っていいかも分からなかったから、結局そのまま送信した。
後の事は返信が来たら考えよう。
そんな風に無理矢理自分を納得させた。
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