18.お泊まり週間(後編)
夕食の後片付けを二人で終わらせて、今は工藤くんの部屋へと向かってるんだけど、
『工藤くんの部屋ってここなの?』
「そうだけど…どうした?」
『あたしが今使ってる部屋がここなの』
どうやらお隣の部屋だったらしい。
「あー。家具やら何やら新しくしてんなぁとは思ってたけど、みょうじが使う部屋だったからなのか」
『!?』
何ですと!?
わざわざ家具とかを変えてた、ですって?!
あー…あたしって何て迷惑な客なんだ……
「何してんだよ。ほら」
『あ、ありがとう』
部屋の扉を開けて待っててくれた工藤くんに、先生の教育徹底されてるなぁ、と感心した。
今時いるんだね、こういう男の子。
「適当に寛いでていいから」
部屋の中は、やっぱり、っていうか想定内っていうか、こざっぱりとしていて、必要なものしか置いてないみたいだった。
大きさの違うサッカーボールがあるのは、小さい方が子供用なのかな?バスケットボールも小学生用のは小さいし。
それにしても小難しそうな本がずらーっと並んでるな。
あたしのキライな物理とか。こういう知識を詰め込んだ結果が、あの推理力に繋がっていくのか。
「みょうじ!」
『え?何?』
「さっきから何回も呼んでたんだけど。そんなに珍しいか?」
『あ、ごめん。ちょっとね』
全国的に人気な工藤新一くんの部屋に入れるなんて体験はこれっきりだろうと思ったら、勝手に色々と視線が動いちゃって。
「ほら、これがさっき言ってたやつ。最近のだとこれが一番オススメだぜ?」
『これ上巻だけど?』
「そうだけど?」
『そうだけど、じゃなくて。これの続きは?』
「それ読んだらちゃんと貸すって」
『え?今貸してくれるんじゃないの?あたし一冊読む毎に部屋移動しなきゃいけないわけ?』
「一緒に本読もうぜって誘わなかったか?」
『あ…そういえば』
そんなことを言われてたような気もする。
ってことで、工藤くんの部屋で読書会が始まって、あたしは小説の世界に意識を集中させようとした。
こんな近くに彼がいたら集中出来ないって!
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