集中なんか出来ないって!
とか思ってたけど、読み出して数分ですっかり小説の世界に入り込んでしまったあたし。
そして上巻を読み終わってしまったので、まだ読書中の工藤くんに悪いと思いながらも声をかけた。
『ねぇ、工藤くん。続きが読みたいんだけど』
「ん?もう読んだのか?」
『うん』
「…ちゃんと読んでるんだろうな?」
『失礼な。ミスリードが何かと犯人までは分かったけど、まだ証拠が、ねぇ…』
「上巻だけで、それがミスリードだって分かったのか!?」
『え?もしかしてわからなかったの?』
「……」
あ、分かんなかったんだ…。
まぁ、迷宮なしの名探偵って呼ばれるようになるにはまだ時間があるから、頑張って。
「あのさ、みょうじ、」
部屋がノックされると有希子さんの声が聞こえてきた。
「なまえちゃーん。お風呂入っちゃってー」
『はぁい。じゃあ下巻借りて行くね』
「お、おぅ」
何か工藤くんが言いかけてたような気がするけど、気のせいかな?
『あ、有希子さん!ちょっとお願いがあるんですけど…』
「なぁに?」
『今度みんなで海に行くんですけど、水着見立ててもらえませんか?』
「もちろん、いいわよ!じゃあ早速明日買いに行きましょう!」
『よろしくお願いします』
「その代わり、なまえちゃんに一つお願いがあるんだけどいいかしら?」
『何ですか?』
「あのね、ちょっと耳貸して?」
『はい?…クスクス。はい、そのくらいで効果があるかは分かりませんが、やってみます』
「そう?ありがとう!」
『それじゃあ、お風呂いただいてきますね』
「うん。ゆっくりしてきてね!」
交換条件はとりあえず成立したけど、いつ決行するかな?
とりあえず、お風呂上がりに先生の部屋に行ってみようっと。
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