17.お泊まり週間(中編)
大量の服やら靴やら小物やらを買い込んだあの日、とりあえず荷物になるからって帰りにマンションまで送って貰った。
いや、だってこのくそ暑い中、あれだけの大量の荷物を工藤邸からあたし一人で持って帰れって軽く拷問じゃん。
…にしてもどうするかなぁ。
あたしも割りと大量買いする派だったけど、あの夫婦はあたしを軽く凌駕する。
だって前回の有希子さんとの買い物と、今回の工藤夫婦との買い物だけで、今まで持ってた私服を全部処分しても困らないまでになってるもん。
とりあえず片付けとかはお泊まりが終わってからでいいだろうと、大量な袋の中から特にお気に入りな一式に着替えて、工藤邸に戻った。
ら、入るなり、
「きゃー!なまえちゃん、やっぱりそれすっごく似合ってるわ!可愛い〜!!」
って有希子さんに抱きつかれたのは、また別の話。
何だかあの話をした日から日に日に有希子さんのスキンシップが増えてる気がするのも、先生がそれを止めずに生暖かい目で見守ってくれてる気がするのも、全部気のせいだってことにした。
うん、気にし出したらいけない。
負けるな、あたし。
…でも有希子さんに勝つだけのスキルがあっても困る気がするな。
そんなこんなで、ご飯の前後は有希子さんのお手伝いをして、適当な休憩時間は先生とお喋りして、それ以外の時間はずっと本に囲まれたあの部屋で読書に耽るという他人の家に来ているというのに、実に自由奔放な生活を送っていた。
「なまえ君、ちょっといいかい?」
『あ、先生。どうかされたんですか?』
「しーっ。静かに」
え?静かにってここ図書館?
今までそんなこと言われたことなかったから、ちょっとビックリした。
『それで、どうされたんですか?』
「これからマスターの喫茶店に行かないかい?」
『いいですね。最近顔出してなかったですし…って、先生?もしかして』
「あは、ははは。まぁ細かいことは詮索抜きということで。15時くらいに私は出るから、その前になまえ君が先に行っていてくれるかい?有希子を撒くのは大変だろうからね」
『はい、分かりました』
有希子さんに迫られることを思えば、こっそり家を出る方が楽に決まってる。
ここはお言葉に甘えて、先に行かせてもらうことにした。
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