16.お泊まり週間(前編)
今日から工藤家にお世話になるので、あたしは荷物の最終確認をしている。
いや、別に忘れ物とかがあったら一回家に取りに帰ればいいだけなんだけど。
そこは気分的な問題で。
ピンポーン
「はーい。あ、なまえちゃん!待ってたのよ!早く入って入って!」
『お邪魔します』
良かった。
どうやら今日は有希子さんのボディアタックを喰らうことなく、無事に工藤邸に入ることが出来るらしい。
毎回有希子さんが飛びかかってくるから、地味に身構えていたんだけど。
安全に入れるならそれに越したことはない。うん。
「あら?なまえちゃん、そのキャリーはなぁに?」
『え?今日から10日間お世話になるので、その荷物ですけど?』
「もう。そんなに荷物持って来なくったって、必要なものは買いに行けば良いだけじゃない」
『……』
いやいや、有希子さん。
普通お泊まりに来る場合は荷物持参が当たり前ですからね?
「じゃあ、とりあえずその荷物を部屋に置いて来ちゃいましょうか。なまえちゃんの部屋に案内するわ」
連れて行かれた先は2階のゲストルーム(だと思われる)で、すごく広い上に、家具類は全部高級品っぽくて…うん、あたしみたいな庶民には勿体無いような高そうな部屋だった。
「今日から此処がなまえちゃんの部屋だから好きに使ってもらっていいわよ」
『……』
えっと、あたし、お泊まりに来ただけですよね?
その言い方だと語弊があるかと思うのですが。
とりあえず、るんるんって効果音が聞こえて来そうなくらいにご機嫌がいい有希子さんには口を挟まないことにする。
そのせいでテンションが下がるのも見たくないけど、それ以上にこれ以上テンションが上がってしまったらあたしでは収拾出来なくなるのが目に見えてるから。
とりあえず荷物はそのままにして、お昼の準備をするという有希子さんのお手伝いをすべく、キッチンへと向かった。
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