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うじうじ500%増し(当社比)ギル注意!



刺さるような視線に、向けられる剥き出しの殺意。
一体俺が何をしたって言うんだ・・・?

ここ最近どうも周りの視線が痛い。
バカウサギが何かやらかしたわけでも(四大公の会議中に上から降ってきたとか)、ヴィンセントが度を超えたスキンシップをしたわけでも(何とは言わないが全力で逃げたことがある)ない。が、何故か視線が痛い。
俺が何かしたのか?いやでもそんな記憶ないし・・・
酒に酔っ払って何かやらかした、なんてことはないだろう。一度だけパンドラで飲まされたが、一番弱いやつを舐める程度だったし、ちゃんとその時の記憶もある。
ナイトレイの怨恨の線かと踏んでみたがそうでもないらしい。

その視線やら殺気やらがアリス、果てはオズからも向けられているからだ。

心休まる場所が今となってはヴィンセントと2人でいる場所だったり、ブレイクとレイムと3人でいる場所になってしまっている。オズの傍にいて心休まらないなんて初体験だから、正直どうすれば良いのか分からなくてすごく困っている。従者として傍にいなければならないが、いかんせん恐い。胃薬が手放せなくなってしまった。
「・・・そういうわけで原因究明を手伝って欲しい・・・すまんブレイク・・・こんなどうでも良いことに巻き込んで・・・俺は・・・」
「・・・えっと」
じめじめ500%(当社比)になっているこのワカメ、どうしたものかと腕を組むブレイクを尻目に、どんどんエスカレートする自己否定。
「大体あの時も俺が気の利かない性格だったからオズを傷付けるしありがとうの一つも照れるとかどんだけだ俺しかも酒癖悪いしうじうじしてるしそういえば前エリオットにお前もう少ししゃきっとしろとか怒鳴られるし8歳年下の義弟に叱られる俺って一体・・・ッ」
まずい。涙が出てきた。
ブレイクの目がどんどん憐れみを帯びてきた。どうしようすごく居た堪れない。
「ごめッ・・・」
こんなだからきっとエリオットにも嫌われたんだ(思い込み)、きっとオズだって・・・

―――まさか。

「ブレイク・・・俺・・・」


とうとう見放された?


ぼろっと出てきた涙が止まらなくて、けれど身体が言うことを聞かなくて。
そのままにしておいたら短い溜息の後、くしゃくしゃと頭を撫でる細い指の感触。
「大丈夫デス。オズ君はそう簡単に君を嫌ったりしませんヨ」
10年もずっと信じて待ち続けて、どれだけ自身が変わってしまっても、ただ1人主を探し続けた従者を捨てるような子ではないでショウ?
「君のじめついた性格もちゃんと理解した上で従者にしてくれてるでしょうから、嫌われたってことはまずないでしょうネ。だから取り敢えず安心しなサイ」
優しい声が降ってきて涙が落ち着いた。俺は子どもか。
「・・・でも、じゃあ何であんな態度なんだ・・・?」
「あー・・・それはですネ・・・」
おい待てブレイク。何故目を逸らすんだそこで。
「言えない事情というものがありましてネェ・・・」
「言えないって・・・まさかまたお前何か隠してるのか!?」
「いや私じゃないんですけど」
「じゃあオズか!?・・・何で頼ってくれないんだ・・・話聞くことくらい俺にだって出来るのに・・・」
「いやァ・・・その・・・何て言うんですかネ、まぁ結構プライベートなので、ネ?」
「俺はやっぱり頼りないのか・・・?」
「決してそういうわけではない・・・と、思いますヨ多分ええきっと」
「フォローになってないぞブレイク・・・」
「私フォロー苦手ですカラ」
しれっと言いやがった。そして開き直りやがったこいつ。
「多分しばらくこの状態続くと思いますケド」
「続くのか!?」
「とにかくオズ君もアリス君も、君を嫌ってるわけじゃないので避けないであげてくださいネ」
「よく分からん・・・」
しかしこの状態がまだ続くのか・・・明日医者に胃薬の追加をもらってこよう、うん。
「あ、ギルいたぁ!!」
突然響いた声に驚いて振り向く。
「おいワカメ!!お前3時のおやつを放って何をしている!!」
「今日俺の好きなショートケーキ作るって言ってたじゃんか!!罰としてチーズクッキーも追加!!」
あ、普通に喋ってくれてる。
安心して涙腺がまた緩みそうになったから、奥歯を噛み締めて何とかしているとブレイクと目が合った。

ネ、大丈夫だったでショウ?

唇の動きだけでそう伝えてきたブレイクに、同じようにありがとうと返す。
「ギルってば!!もう一個追加するよ!!」
「分かった分かった。何が良いんだ?」
「んー、じゃあシフォンケーキ!」
「あのふわふわのやつだな!!私もあれは好きだ!!」
「じゃあ待ってるからさっさと作って持ってきてね!!」
「分かった。紅茶はどうする?」
「ダージリン!ほら行くよギル!」
「うわ、オズ、バカウサギ、引っ張るな!」



腕を引かれて歩きにくそうにしながらもどこか嬉しそうな顔を見送って、廊下に誰もいないのを確認して一言。

「皆君に気がある、なんて言えないじゃないですカ・・・」

溜息はまだしばらく続きそうだ、とピエロは溜息を吐いた。


“意識”

(まぁ意識するようになっただけマシですけどネ)
(・・・にしても殺意って・・・)







向けられていたのが殺意じゃなくて好意なのは言うまでもないですがやっぱりそこは超絶鈍感ギルクオリティ←
 


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