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ギルバートが20歳以前に鴉を手に入れて、一人暮らしを始めたと仮定して。







「いいですカ?ギルバート君」
ギルバート=ナイトレイ、20歳。

今、何故かものすごく恐いピエロに説教をくらっています。

正直なところ自分が何をやらかしたか分かりません。
でも取り敢えず目の前のこいつが恐いです。
いや本気で俺は何をやったんだ・・・?
「あの・・・ブレイk」
「ギルバート君。私はネェ、怒ってるんですヨ」
「・・・はい」
待て、怒ってるのは分かってるからその理由を教えてくれ。
なんて言えるはずもなく。
鴉は手に入れたから最悪手を切られても―――いや困るな。すごく困る。
だってオズが戻ってきた後、匿う場所がない。俺のアパートじゃ狭いだろうし・・・

「ギルバート君?何余計なこと考えてるんですカァ?」

まずい、笑顔になった。
冷や汗がダラダラと背中に流れるのが分かる。これは本気でまずい。
「・・・あ、の」
「何ですカ?」

恐い。かつてないほど恐い。左目の空洞を見たときよりも恐い。今ものすごく逃げ出したい。

「お、俺は何をやったんだ・・・?」

蚊の鳴くような弱々しい声。聞こえただろうか。これで聞こえてなかったらもう一度訊くのは無理だ。恐すぎる。
しかしそんな心配は無用だったようで。
「はーぁ・・・」
雰囲気が柔らかくなって、ブレイクはぐったりと溜息を吐いた。
「・・・取り敢えず、泣かないでくださいヨ。私がお嬢様に怒られマス」
気付いたら頬が濡れていた。いやお前が恐かったんだよ!!俺だって恐すぎて泣くとか初体験だからな!?
心の中で文句を言いつつ涙を拭い、腫れたであろう重たくなった目をブレイクに向ける。

「連絡も寄越さないで一週間消えないでくだサイ。仕事があるならそう言ってくれれば良かったデショウ」

何かあったかと思って心配したんですヨ?柄にもなく。
苦笑いして頭に手を載せられた。
そういえば最近この男に会っていなかったことに気付く。裏仕事に追われて忙しかったために、パンドラにすら顔を出していなかった。
アパートで一人暮らしを始めたから屋敷にも戻っていない。考えてみれば、ブレイクにはアパートの住所を教えていなかった。
「・・・悪い」
「いーエ。生きてたので安心しましたヨ」
でも今後はちゃんと連絡くださいネ。
こくりと頷いて、心配して怒ってくれたことに感謝半分、照れくささ半分の感情を隠し、ブレイク好みの甘いロイヤルミルクティーでも入れてやるかとキッチンへ向かった。


“連絡”

(まさか心配されるとか、怒られるとか思ってもみなかった)
(今度はちゃんと連絡しよう)









消息を絶った一週間の動向
月:キッチン用品を見に行っていた
火:市場を歩いてみた
水:前日見つけたコーヒー専門店に行ってみた
木:ご近所さんとお茶をした
金:ちょっと家具を足してみた
土:自分専用のキッチンにテンションが上がって料理三昧
日:洗濯と掃除をして家事の楽しさに目覚める

嘘です。ごめんなさい。
まだしりとりやってるよ!!←主張
 


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