10/25 ギルバートが20歳以前に鴉を手に入れて、一人暮らしを始めたと仮定して。 「いいですカ?ギルバート君」 ギルバート=ナイトレイ、20歳。 今、何故かものすごく恐いピエロに説教をくらっています。 正直なところ自分が何をやらかしたか分かりません。 でも取り敢えず目の前のこいつが恐いです。 いや本気で俺は何をやったんだ・・・? 「あの・・・ブレイk」 「ギルバート君。私はネェ、怒ってるんですヨ」 「・・・はい」 待て、怒ってるのは分かってるからその理由を教えてくれ。 なんて言えるはずもなく。 鴉は手に入れたから最悪手を切られても―――いや困るな。すごく困る。 だってオズが戻ってきた後、匿う場所がない。俺のアパートじゃ狭いだろうし・・・ 「ギルバート君?何余計なこと考えてるんですカァ?」 まずい、笑顔になった。 冷や汗がダラダラと背中に流れるのが分かる。これは本気でまずい。 「・・・あ、の」 「何ですカ?」 恐い。かつてないほど恐い。左目の空洞を見たときよりも恐い。今ものすごく逃げ出したい。 「お、俺は何をやったんだ・・・?」 蚊の鳴くような弱々しい声。聞こえただろうか。これで聞こえてなかったらもう一度訊くのは無理だ。恐すぎる。 しかしそんな心配は無用だったようで。 「はーぁ・・・」 雰囲気が柔らかくなって、ブレイクはぐったりと溜息を吐いた。 「・・・取り敢えず、泣かないでくださいヨ。私がお嬢様に怒られマス」 気付いたら頬が濡れていた。いやお前が恐かったんだよ!!俺だって恐すぎて泣くとか初体験だからな!? 心の中で文句を言いつつ涙を拭い、腫れたであろう重たくなった目をブレイクに向ける。 「連絡も寄越さないで一週間消えないでくだサイ。仕事があるならそう言ってくれれば良かったデショウ」 何かあったかと思って心配したんですヨ?柄にもなく。 苦笑いして頭に手を載せられた。 そういえば最近この男に会っていなかったことに気付く。裏仕事に追われて忙しかったために、パンドラにすら顔を出していなかった。 アパートで一人暮らしを始めたから屋敷にも戻っていない。考えてみれば、ブレイクにはアパートの住所を教えていなかった。 「・・・悪い」 「いーエ。生きてたので安心しましたヨ」 でも今後はちゃんと連絡くださいネ。 こくりと頷いて、心配して怒ってくれたことに感謝半分、照れくささ半分の感情を隠し、ブレイク好みの甘いロイヤルミルクティーでも入れてやるかとキッチンへ向かった。 “連絡” (まさか心配されるとか、怒られるとか思ってもみなかった) (今度はちゃんと連絡しよう) 消息を絶った一週間の動向 月:キッチン用品を見に行っていた 火:市場を歩いてみた 水:前日見つけたコーヒー専門店に行ってみた 木:ご近所さんとお茶をした 金:ちょっと家具を足してみた 土:自分専用のキッチンにテンションが上がって料理三昧 日:洗濯と掃除をして家事の楽しさに目覚める 嘘です。ごめんなさい。 まだしりとりやってるよ!!←主張 ← → |