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また彼は傘を持たずに佇んでいた。
何かを洗い流すかのように彼は雨に濡れようとする。
そんなことをしたって汚れた手は綺麗にならないし、染み付いた血の香りは消せない。
後悔すらも、流せない。
分かっていても彼は雨に当たるのだ。
ただぼぅっと佇むのだ。
求める姿を雨に映して。
頬を伝う雫を雨に紛れさせて。

そんなことをしたって、彼の望むひとは戻ってこないのに。

「風邪引きますヨ」

同じようにまた私も道化を演じて傘を傾ける。
彼をこちらの世界に引き込んだことを後悔するつもりはない。権利も、ない。
示したのは自分でも、選んだのは彼だ。これは言い訳などではなく、事実。
だから私には後悔する権利は、ない。

「ギルバート君」

だからせめてこうして傘を傾けるのだ。
利用価値のある駒に消えられたら困ると、冷徹な道化を演じて。
彼は心配すらさせてくれないから。

その冷たい身体を抱き締めることすら、させてくれないから。

「そんなんじゃ、手に入れたいものも手に入りませんヨ」

それが手に入らなければ、もう君の会いたいひとには会えないでしょうネェ。

一度でいい。
弱った羽を広げてほしい。
疲れきって、傷つくにいいだけ傷ついた、そのぼろぼろの羽を。

「・・・・・・戻る」

あぁ、何て滑稽な。
そんなことを望む権利すらもう、自分にはないというのに。

あの羽に一番最初に傷を刻んだのは自分だというのに。



あぁ、冷たい雨だ



いつか止んで
太陽が顔を出せば探し人が現れたなら

彼の羽の傷も癒えるのだろうか

そんな日が来ればいいと

道化師は真っ暗な空を見上げた


“時雨”

(意味はふたつ)
(通り雨と、君の頬を濡らす雫)









誰か気付いてくれてるだろうか・・・
今までのshortの話、全部タイトルがしりとりになってるんですが・・・(笑)←雰囲気ぶち壊し
 


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