ガーベラ
取り敢えず月が大きくて奇麗だった。
莨の煙が揺らめいて、
そう、
朧月に僕がした。
終日(よすがら)、近頃最近この街の黎明が早い気がする。
ナイトシフトには不幸この上ない話だ。
此のガーベラも君が目に為る事無く、美人薄命、枯れて終うだろうよ。
呉れて遣るさ。
高が云佰円の女王様への献上物だ。
昇降機の扉が気怠そうに漸く開いた様はまるで、深潭からの救済、逆も又然り。
お仕舞いだね。左様なら。
潭の主は君で、此の眩暈は闇を見た所為だけでは無いだろう。
「……あ」
君を偲ぶ、最後の縁(よすが)のライターが暗く地面に繋がる硲に、
吸い寄せられ、
眼で追う僕は其侭。
かつん。
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