裂眩

碧鈍のガッシュをナイフで塗りたくった様に分厚く無機質な空の下に、白く艶やかに淡く発光した桜の華が虚しく咲き誇って居た様です。

添う、影も無し。

僕は色を無くして終って居るので、その内夜の色に染まり行くのだと思います。
雨模様なら、潔く諦めがつくと言ふのに。
嗟。つれもなし(関係ない)等とは良く言えたものだ。
思ひ設く(心の準備をしておく)暇も無く、唯唯僕には僕を塗り潰して終ふ液体しか目に入らないのだ。
貴女には、猶負ふ(なおふさわしい)方が現れて終ったのでしょう。
白いカンバスに描かれた貴女は最早僕の前には現れはしない。
くすんだ花弁が雪の様に降り注ぎ此の皮膚から鈍さを浸食して行く最中、いぎたなし(眠りを貪る)浅ましい自分を辱めて其で満足出来る筈が無いのに。

らうたし(愛しい)貴女、嗟、憎き貴女。

かげろふ(陽炎)のやうに命が短ければ良いのに。
嫌に小綺麗で鮮やかな記憶と心象だけを角膜に焼き付けて、消え去りたかった。
僕が愚かだった、と。
貴女の言ふ通り、然も有りなん(その通りなのだ)。

消炭に為った僕は来年桜の花ビラを雪ぐ。







貴女を劃してあげるよ。


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