全ては無意味なんだよと奴が言った
「いのちゃんといいサクラちゃんといい、一族の復興が夢とは言え嫁候補をもう二人も見つけてるとはやるな我が弟よ」
 暗部の黒い外套に身を包んだ姉のマコトが言った。先程集落の門の前でサクラといのに引き留められていたのを見ていたのだろう。少しだけ漂う血の臭いに、外套の中は血塗れだということが見なくても解った。勿論その血は姉のではない。
「だがしかし残念なことに今現在の木ノ葉条例では一夫多妻制は認められておらんのだ。個人的には山中一族の跡取り娘であるいのちゃんよりもそう言ったゴタゴタの心配がないサクラちゃんがオススメだがどうする? いのいちさん相手に愛の婿舅バトルするか? ……それはそれで燃えるな」
 姉さんはたまに『死』の匂いを漂わせる。それは今の血の臭いのように具体的な時もあるが、普段の生活の中でふとした瞬間に墓地のような静謐さを漂わせる。寂寥も寂寞もない、純度の高い『死』の匂い。
「あの人は手強いぞ我が弟よ。何てったって『娘ラヴ!』の親バカだからな」
 それでいて、平気で未来の話をする。


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