Wild Weasel
※話の都合上の捏造や妄想が含まれます。矛盾していても深く考えずに雰囲気で読み飛ばしましょう。
※ご都合主義万歳!




 イタチであろうとすることは、それ即ち自分はイタチではないという証明に他ならなかった。
 生前ファンであったサスケに凄いと喜ばれるのはことのほか嬉しく、我ながら単純としか言いようがないが、より一層修行に打ち込むことになった。
 親友がいて、弟がいて、母がいて父がいて、集落の皆がいて。このまま平和な日が続けばいいと、そんなことは到底無理なのだと分かっていても、そう願わずにはいられなかった。
 そしてオレのそんな願いをあざ笑うように、暗部入りが決まった。

「イタチー!」
 親しげにオレをそう呼ぶのは、ある日突然増えた見知らぬ親戚。
 自分以外は皆まるで昔から彼女を知っていたかのように接するなか、その女に違和感を抱くオレはやはり異質なのだと思った。
 事ある毎に悩み事があるなら言えと、オレの味方だと囁くこの女には不信感しかない。その耳障りの良さはまるで、ずっと前から用意していたかのような言葉だった。
 生来感情の起伏が少なく、来るもの拒まず去るもの追わず主義が仇になったのか、いつのまにかオレと彼女は一族公認の恋人同士になっていた。

「イタチ! こんな事もうやめて!! 私は貴方の味方――」
 血族の血に塗れたオレの姿を見て彼女が息を飲んだのが判った。きっと上忍とは名ばかりで、特典か何かで与えられた身体能力を有効活用するすべもなく持て余し、実際に戦ったことなどないのだろう。
「……味方? オレの敵は、誰だ?」
「え……、何言って、イタ――」
「お前はオレが『何』と戦っていると思っている? オレはただ、サスケの為に任務を遂行しているだけだ」
「っだからそれ自体――」
「お前はオレイタチの恋人なんだろ? なら――『原作』通り、イタチに殺されるべきだよな?」
 彼女の顔が驚愕に染まる。四六時中愛想を振りまき、異性に媚びていた顔と同じ顔とは思えなかった。
「原作って……、貴方まさか……!」
「そう、そのまさかさ。オレと君は同郷なんだろう? イレギュラー、アウトサイダー、異郷異世界の人間。お前が突然現れたときは、本当に驚いたよ」
「い、いや! 何で? だって私は――」
「『イタチを救う為にこの世界に来た』のに? 救済なんて夢を見るのはやめておいた方がいい。風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなるだけだ」
 後ずさる彼女を追いかけるようにゆっくりと歩み寄る。恐怖か絶望か、イタチを救えないことによる悲しみか。涙でぐちゃぐちゃになった彼女に赤く濡れた刃を向ける。
「残念だったな。お前の知るイタチはいない、この世界のイタチは――オレだ」


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