日常茶飯事
「隠れ里の里長達って偉いよね。だって隠れ里ってその国の軍事基地みたいなもんでしょ? そんでもって里長ってそこの最高権力者だよね? ほらよく「○○将軍がクーデターを起こしました!」みたいな映画あるじゃない? 「政権取って軍事政権やっちゃう?」ってならないのが本当に凄い。やっぱり里長は人格者じゃないとなれないのだろうねぇ……。ああ、だから大蛇丸は火影になれなかったのか。納得した」
「……遠巻きにワシを人格者と誉めても、今度こそ許さんぞ」
 カンッ、と煙管が灰皿に叩かれた。火影笠から向けられる老いを感じさせない鋭い目つきがマコトに向けられる。
「えー、何でー? 宝物庫にちょっと入っただけじゃん」
 一方のマコトはヒルゼンの前に引っ立てられても尚ふてぶてしい。捕獲されたときのままの、網がかけられ縄でぐるぐる巻きにされた絡まった毛糸玉のような姿だ。
「ちょっと入っただけ、じゃと……? それには術具を勝手に持ち出して使用した挙げ句に破損したことも含まれておるのか」
「……ワォ。バレてーら」
 次の瞬間、ヒルゼンの拳骨が鈍い音を立ててマコトの頭頂部に落ちた。

 次の日、大きなたんこぶを作ったマコトが辺りを睨め付けながら、至極嫌そうに受付事務をしていた。受付に来た者は皆目を合わせないようにマコトを遠巻きにし、両隣の同僚も椅子を少し離して座っている。業務妨害も良いところだ。
「マコト……また何かしたの?」
 任務明けにたまたま通りかかったカカシがそれに気づき声をかけたのだが、返ってきたのは八つ当たりと言える辛辣な台詞だ。
「五月蝿いなァ。案山子は畑に帰って雀か烏の相手してろよ」
 しっしっと手つきであっち行けされるが、そんなことは日常茶飯事なのかカカシが気にする体はない。
「今度は何したのよ」
「……ちょっとオモチャで遊んだだけだもん。それなのに火影様ってば、ほら見てよ! すっごいたんこぶ!」
 ほらほらと頭を突き出してたんこぶがあるであろう辺りを指で指すが、はっきり言って髪の毛でよく分からない。
「痛いから触らないでね」
 そう言われると触りたくなるのが人間の心理だろう。でも触らないのはカカシは自分が大人だと思っているから。餓鬼みたいに好きな女の子にちょっかいをかけるような真似はしない。
「今日はてんぞーさんいないの?」
 そんなカカシの気も知らずに爆弾を投下するうら若き乙女が一人。撤回、撤回、大人になんか、ならなくて良い。
「いっ! いだ、いだだだだ! ちょ、こら、何すんじゃわれぇ!」


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